とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

哲学の先生と人生の話をしよう〜を読みました

 

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前回、”暇と退屈の倫理学”が面白かったので、他の著書も読んでみようかな〜と図書館で探したら、あったので。

 

メルマガの人生相談を本にまとめたものです。

寄せられた相談内容は、私にとってはあまり共感できるものはなく、正直「なんか、めんどくさそう。聞きたくないなぁ」と思ってしまうようなものが多いのですが、その相談事に対する國分先生のお答え、というより、相談者についての分析、が面白い。

 

まるで、探偵小説の名探偵みたい。

それもシャーロック・ホームズというよりは、エルキュール・ポワロかミス・マープル

 

例えば、モテない、彼氏ができないと悩むアラサーの女性に対して、悩みの内容ではなく、彼女の選んだペンネームに着目。

そこから、相談者の人となりを見抜き、そのままの個性を大切に、と暖かく答える。

それは、まるで晩年のポワロのよう。

 

かと思えば、恋人への不満を訴える相談者に対して、相談文での言葉遣いの違いから、本人ですら気づいていなかったかもしれない本心を見抜き、あえて挑発的な言い方をすることで、本人の覚醒を促したり。

 

ポワロが出てくる短編集の中にも、ポワロがほんの些細なことから犯罪の予兆を見抜き、さりげなくそれを防ぐ、という話があります。

スズメバチの巣という題名で、DVDにもなってますね。

まるで、それを彷彿とさせる展開です。

 

他にも、妻の両親に不満を抱く夫の、最後につけ足した但し書きの一文から、妻の家に潜む深刻な家庭病理を見抜く。

 

恋人の将来に不安を抱く女性には、まるでミス・マープルばりの予言を、復讐心が捨てられない大学生には、その相談内容に描かれなかった裏の真犯人を指摘してみせるなど。

 

まるで、よくできた心理推理小説の短編集を読んでいるよう。

 

一方で、深刻そうな悩みに対しては、ただの自慢話と読み解き、僕だったら「お前さ、相談に見せかけて自慢してんじゃねーよ」と言ってしまいそうです。

などと、オチをつけて見せたり。

 

仕事で悩む若い男性に、本当は、君にやる気がないだけ、という点をはっきり教えて、その奮起を促したり。

 

ただの人生相談ではないところが、さすが、哲学の先生。一筋縄ではありません。