続・フェミニズムという呪い 女性だって男性差別をしていませんか?
もう終わってしまいましたが、5月ごろやっていた「みをつくし料理帖」というドラマ。
NHKで夕方6時からやっているドラマシリーズの一つです。
主役の黒木華のファンなので、録画して見てました。
健気で可愛らしい主人公が、彼女自身のようで見ていて応援したくなる。
そのドラマの中で、主人公が、江戸の料理人には扱えない鱧を料理するために、扇屋という置屋に呼ばれる場面がありました。
ところが、料理人が女性だと知った扇屋の主人から「女の料理は家族内で食べるまかない料理。お客に出す料理は作れない」とはっきり断られてしまいます。
「女はそもそも不潔。月の物を扱った手で食べ物に触るなど、気持ちが悪い」とまで言われてしまう。
この場面、女性なら主人公と一緒に「くぅ〜」とほぞを噛んでしまいます。
私も以前、父と同じくらいの世代の男性から
「私の田舎じゃね、女は牛と同じ、言い聞かせてわかる生き物じゃないから、鼻面に綱をつけて引っ張るくらいに痛い思いをさせて、こっちの言うことを聞かせるもの、と教わったものだよ」
と何のてらいもなく言われて、気分が悪くなったことがある。
その男性が教授と呼ばれる地位にいた人で、教養レベルが高い人だと思っていただけに、ショックだった。
でもねこの間、NHKの朝のニュースで、男性保育士の直面する問題、というテーマで、男性の保育士さんに子供のおむつ替えや着替えをしてほしくない。と希望するお母さん存在が取り上げられていました。
インタビューを受けるお母さんたちは、認可の保育園に預けているくらいだから、もちろん男性と同じように社会でしっかり働いている人たち、だと思うのですが、当たり前のように、オムツ替えや着替えは女性保育士にやってもらいたい、男性がやるのは気分的に嫌だと、はっきり言っていました。
中には、男性保育士に子供の世話を任せたくない、男性には向いていないから、と言うお母さんも。
でもこれって、おみをさんがドラマで言われていたこと、今まで私の母や祖母の世代が、言われてきたことと同じことではないですか。
男女が入れ替わって、対象が違っているだけで。
それから、これは19日配信のYahooの記事ですが、作家の林真理子氏が、自分のお母さんを介護施設に預けたことに関連して、
「地域でいちばん優良といわれる介護施設へ入ったのですが……。介護って、やさしい中高年の女性にやってもらいたいんですけど、母は、60歳過ぎの、入居者かと思うようなオジサンにオムツを替えてもらっていて。プライドの高い人ですから、あれは、かわいそうだったな……」
と語っていて、引っかかった。
コメントにも、
「これって、嫌かも知れないけど、失礼ですよね。
気持ちは分からなくもないけど、思ってても口にしたらダメなことじゃないですか?
時々こういう事を堂々と言ってくる家族がいますけど、こちらとしては正直「じゃあ、あんたがやれば?あんたの親でしょ?」って気持ちになります。」
と投稿していた人もいて、確かにそうだよな、と思いました。
女性は社会で、いわれのない差別されている。
今だってほら、こんなこと、あんなこと。
と、例を挙げればきりがないけど、そういう私たち女性も同じ土俵で、男性に対して差別、してませんか。
出産の時、実習の学生さんをつけて良いですか、と依頼されました。
一人目の時は女子学生でしたが、二人目の時は男子学生でした。
とても真面目な青年でした。
子虫のお風呂介助とかしてもらいました。
私がお風呂に入ってる間、泣きわめく子虫をずっと抱っこしてくれました。
あとでその学生さんが、ぽつりと言いました。
「実習を受けていただいて、ありがとうございます。これで何とか受験資格が得られます」
聞けば、今までずっと断わられていたとのこと。
実習の単位が取れないと、看護師になるための受験資格も得られない。
現場も困っていたそうです。
どうしても駄目な時は、他の科の患者さんで済ませることもあるそうで、彼もそうなるだろう、と覚悟していたそうです。
私の前に、現役の看護師をしているお母さんにお願いしたのですが、断られたそう。
これって、おみをさんが女性だとわかった途端に、作った料理を味見することすら「不潔だから、不浄だから」と拒否した扇屋の主人と、同じことじゃないでしょうか。
気持ち悪いとか、嫌だ、という気持ちは生理的なもので、反射的に起こるものだから、そう感じることが間違っている、とは言いません。
巷では、小児性愛者による犯罪もよく聞くし、不安になるのもわかります。
でも、保育士さんや介護士さんがどんな人なのか、その個人を知ろうともせずに、一律に条件反射で
「男性保育士にうちの子のオムツや着替えをさせないでください」
「体に触るような遊びをさせないでください」
「うちの母のオムツ交換をするのは女性に限定してください」
と言うのは、どうかな、と思うのです。
自分の権利を主張するなら、自分が差別されていることを訴えるなら、
同じような差別を、誰かに、気づかないうちに、自分もしているかもしれない、
ということを謙虚に振り返らないといけない、と思ったのでした。
みをつくし料理帖のこの回の最後では、扇屋の主人はみをが料理をする姿、その所作や手際を見て、考えを改めます。そして作った料理を一口食べて「私が間違っていました」と潔く謝ります。
ドラマだからご都合主義な終わり方、なのかもしれませんが、女性だって、男性に差別をするのだし、それを潔く認めることだって、必要なのではないでしょうか。
私にしてもたまたま、男性看護師さんや男性介護士さんに抵抗が無かっただけで、もしかしたら無意識に誰かを、いわれなく差別してるかもしれません。
他人のことは、きっと言えないと思うので、心せねば、と思うのでした。