バッタを倒しにアフリカへ〜を読んで
本屋さんで、平積みされていました。
表紙には怪しいコスプレの年齢不詳のおっさん。
名前に入っているウルドって何?
ハーフなの?
それとも中二病がこじれた人なの?
ひょっとして、芸人さんの企画もの旅行記かなんかですか(猿岩石みたいな)??
帯には
「バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが、修羅への道とも知らずに、、、」
『孤独なバッタが群れるとき』の著者が贈る化学冒険(就職)ノンフィクション。
と書かれている。
なんか、ファンタジー系ラノベみたいだけど、実は真面目な内容かしら。
立ち読みしてみました。
冒頭に「子供の頃からの夢、全身緑の服を着てバッタに食べられてみたい」とある。
やっぱり、この人変態かも?
アメリカホラ話にもバッタって出てきましたっけ。
緑に塗っていた牛が食べられてしまった、とかいう話。
「飛蝗」というと、三国志なんかで読んだ覚えがある。
合戦をやめさせるくらいの威力が、あったそうですね。
飛蝗が来ると、皆、戦争をしているどころの話ではなくなったという。
旧約聖書にも、出てきてた気がする。
それほど昔からあった災害なのに、未だ、解決されていないのだそうです。
びっくり。
でも、エボラ出血熱だって、未だにワクチンも有効な治療法もないし。
お金にならないと、そして被害の多くが貧しい発展途上国だったりすると、研究も進まないのでしょう。
そんな、バッタについて(イナゴとは違うそうですね)の研究を志し、子供の頃に憧れた昆虫学者になるために、一人の若者が奮闘する話でした。
それにしても、日本の博士取得者の就職状況の悲惨さは、本当にひどいようです。
甥っ子達は、修士まで取らないと良いところに就職できないから、と言って大学院に行きましたけど、博士をとって研究の道に行こうと思うと、良いところどころか、就職口すらない、らしい。
博士を取るためには大学4年、大学院で修士課程2年、博士課程3年の合計9年かかる。
途中で浪人とか、留年とかしたらもっとかかる。
そのあとも、2年から長くて5年くらいの任期付き研究職を転々としながら、任期なしで研究が続けられるところへの就職を探して、暮らすらしい。
その間、本人も大変だけど、支援を続ける親御さんはさぞかし大変だろうと思います。
この先、どうなるかの保証もないわけだし。
この辺り、他人事ではありません。
著者も、アフリカで研究を始めたものの、所詮は非常勤の期限付き。
ついに無職、無収入となってしまいます。
無収入となっても、研究を続けたい一心で考えたのが、表紙の変態風コスプレでした。
ネット主催のイベントに参加して、研究費を募るための苦渋のアイデアだったのです。
そういえば、あのips細胞の山中教授も、研究費のためにチャリティマラソンを走ったりされていたそうですね。
いまどきの日本の研究者には、研究だけでなく、体力と芸人のセンスも必要なようです。
そうして頑張って研究費を手に入れても、今度はイロモノ扱いされて悩んだり、心ない人からの嫌味なコメントやメールに心が傷つけられたり。
前途多難の中、なんとか京都大学がスポンサーになってくれて、またアフリカで研究を続けられることになります。
そうして再びアフリカへ。
飛蝗襲来時には、念願の全身緑でバッタにまみれ(ることなくスルーされたようですけど)、研究所の所長からは名前を受け継ぎます。
あのウルドという、中二病全開みたいな名前にもちゃんとした由来がありました。
先週まで読んでいた、早期引退者達の、マイペースだけどどこか冷めていて自分の小さな楽しみだけに喜びを見出している生活とは大違い。
とにかく、周りを巻き込んで、大なり小なり応援してもらいながら突っ走っています。
でも、この人の生き方は応援したくなりました。
とにかくどんな状況でも前向き、バッタを研究したい、その一心で行動している。
今は帰国して、正規雇用の道を得るために、せっせと論文を書いているようです。
彼がいつまでも好きな研究を続けられますように。
そしてこういう人がきちんと評価されて報われる世の中になりますように。
「神の罰」とまで言われる飛蝗の害が、コントロールできるようになりますように。
そこに、日本人の貢献があったら、同国人としてもちろん嬉しい。