蝉の歌を聴ける国
今日は、お仕事が昼前からでした。
滅多に無いことなので、空いた時間を有効活用しようと思い、更年期障害のお薬メノエイドコンビパッチを処方してもらいに、婦人科へ行って来ました。
ここの先生は、子虫の出産の時にお世話になった先生。
当時は病院勤務医でしたが、その後実家の産婦人科を姉妹で継がれたので、私も追っかけで、こちらに受診してます。
最初は前の主治医の妹先生でしたが、最近は姉先生。
元々外科医をされていて、実家を継ぐために婦人科に転科されたそうで、さばさばした口調の男前な先生です。
年が近いせいか、子虫の愚痴とか聞いてもらってます。
先生も話好きだし、クリニックが暇だと話が弾んでしまうので、ちょっと早めに行くことにしました。
日が高くなると、外は暑いし。
薬を出してもらい、クリニックを出ると微妙な時間。
クリニックからバイト先には、歩いて20分ほどなので、このまま直接行くと早く着きすぎてしまいます。
何処かで時間でも潰すかなぁ、と思いつつふらふらと、クリニックの近くの川端を歩く。
鹿児島市を流れる甲突川は、最後に海に注ぐので、クリニックの近く辺りになると潮の香りがほのかに漂います。
足元も白い砂地で、海が近いのを感じます。
川に沿って桜や楠木の並木道と公園があって、歩くと気持ちが良い。
陽射しは強いのですが、楠の木陰は爽やかな風が抜けて、思ったよりもずっと涼しい。
所々にベンチがあるので、腰掛けてぼんやりしてみました。
通り過ぎる人を眺めたり、流れる水の流れや雲の動きを見上げたりしていると、気持ちが良い。
蝉の声も、いつもは暑さを盛りあげるみたいに忙しないのに、今日はさらさらと風のリズムに乗って流れてきます。
ジャズのセッションみたい。
そう言えば、ヨーロッパの蝉は鳴かないそうですね。
昔読んだ、上野動物園の元園長さんの書いた本の中に、こんな話がありました。
ある夏のこと、動物園に来た珍しい動物の世話を指導するために、ドイツから二人の飼育係が来日したそうです。
彼らは夏中、裏に小さな山のある作業所で、他の飼育員に餌の作り方などの指導を、熱心にしてくれたそうです。
帰国するときに、そのお礼も兼ねてお土産に欲しいものを尋ねたら、作業所の裏山にある雑木の苗木を所望されたそう。
不思議に思って
「ドイツにはその木は無いのですか?」
と聞くと
「同じ種類の木はあるのだけれど、鳴かないのです」
と答えたそう。彼らが言うには、
「あの裏山の木は、夏中、とても良い音で、我々を楽しませてくれたので、ぜひ故郷に植えて、故郷の人にも聞いてもらいたいのだ」
と。
裏山の木々で鳴いていたのは、もちろん蝉でした。でも、蝉が鳴くことを知らないドイツ人達は、木が鳴いている(あるいは、音を奏でている)と思っていたのでした。
音を奏でる不思議な木を、持って帰ることが出来なくて、そのドイツ人達はさぞがっかりしたことでしょう。
そんなことを考えて、ちょっとほっこりしたりして。
街中なのに、時々しか人も通らなくて、本当に静か。
こんな日は、やっぱり私はここが好きだなーとしみじみ思う。
人生で、一番長く住んでしまいました。多分、ここ以上に長く住む所はないでしょう。
来たばかりの頃は、ここまで長くなるとは思いもしませんでした。
人生わからないものです。
こうしてのんびりしてると、アーリーリタイアさん達の気持ちもわからんでも無い。
ですが、このまま何時間もぼんやり座っていられるか?と言うと、無理かも。
家に居れば、本を読んだり、ネットを見たり、あとはついでに家事をしたりと、やる事はあるのですが、何もしないでぼんやりするのは、やっぱり落ち着かなくなりそうです。
根が貧乏性なのでしょう。
さてでは、よっこらしょと立ち上がって仕事に行かなきゃ。
川辺から一歩出て、通りに出るとアスファルトの道路や、コンクリートの建物からの輻射熱で、一気に暑くなる。
もう半端ない暑さです。
舗装された道路は、雨が降っても泥だらけにならないし、凸凹もなくて良いけれど、世の中が年々暑くなっているのに、絶対関係あるよね、と思った瞬間でした。