とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

ダンケルク観てきました〜

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パンフレット買いたかったのに、売り切れでした(´・ω・`)。

戦争映画はどうも苦手なので、避けてしまうのですが、クリストファー・ノーラン監督だし、相方のおじさんも「なんか評判いいらしいよ」と言うので、観てきました。

クリストファー・ノーランは、行きつけの美容室の美容師さんがファンで、「特にバットマンシリーズは、めっちゃ良いっすよ」といつも勧められていたので、「ふぅん、そうなの?」と観てみたのが始まり。
たしかに、インセプションとかインターステーラーとか好きでしたけど、それほどにはハマってなかった。

バットマンシリーズをツタヤで借りる時に、あと二本借りて安くしようと、借りたのが”メメント”と”インソムニア”でした。
以来ノーラン作品、と言うだけで、観ちゃいます。
CGを使った作品が多いみたいだけど、実写の方が良いような気がする。
特にメメントは、名作だ、と思う。インソムニアもホテルの女主人の台詞が良かったな。

もちろん今回の映画も、すごく良かったです。
私の中では、レヴェナントと同じくらい良かった。
多分、今年いちばんの映画だった、と思う。
まだ、12月にスターウォーズが控えてますけど。

あとで調べたら、アカデミー候補に早くもなっているそうですね。
「これは取るかも」と思いました。

ここから先は、思いっきりネタバレしてます。

映画は、一人の英国軍二等兵の主人公が、町を逃げ惑うところから始まります。
まだ少年っぽさの残る、銃の扱いも覚束ないような新兵さんです。
ところでこの映画、主要な登場人物に名前がない。
主人公も名前、呼ばれているシーンあったっけ?

民間人である遊覧船のおじさんや、息子、息子の友達はしっかり名前があって、お互い呼び合うのに、空軍のパイロット達も名前を呼びあうのに、主役であるはずの逃げ惑う陸軍兵士たちは、全然名前がない。
と言うか、呼び合うことがない。
主人公と一緒に逃げて逃げて、最後に力つきるイケメンの兵隊さんに至っては、最後のキャスト欄にすら、フランス人兵士、としか書かれていない。
戦争に行くと言うことは、兵士になると言うことは、こんな風に、個性や、人生や、名前を奪われてしまうことなのだな、とふと思ったりして。

助かる兵士も、死んだ兵士も、同じように重油にまみれて汚れて顔も真っ黒で、誰が誰やらさっぱりで、個人というものを徹底的に奪われています。
誰が助かるのか、助からないのか、本当に運次第。
何が良くて、何が悪いのかも、わからない。

そして、兵士たちが銃撃される時、どこから撃たれているのか、観ている観客の私達にも全然わからない。
それが、今ここで現実に起きていることのように、すごく臨場感たっぷりです。
実際の戦闘って、きっとそうなのだろうな。
と思いました。
もう、わけがわからないままに、逃げ惑い、ひたすら生き延びたくて、その場、その場の行動をとるしかない。

そんな感じがものすごくリアルに伝わってきます。
カート・ヴォネガットJr.のスローターハウス5を思い出しました。
時間や場面がちょこちょこ飛ぶのも似ています。
ノーラン作品は、メメントがそうであるように、時間とか空間を自在に切り取って、コラージュみたいになっていることが多くて、しっかり見てないと置いていかれそう。でもそこが魅力だったりするわけですけど。

最後の方で、生き延びて無事イギリスの港にたどり着いた兵士たちに、毛布を配りながらおじいさん(ボランティア?)が言います。
「よくやった」
高地連隊の兵士が言います。
「ただ逃げ回って、帰ってきただけだ」
おじいさんは、
「それだって、大したことだ」
と、言います。うんうんそうだよね。
そのおじいさんは、いささか無造作に毛布を渡しています。兵隊はたくさんいるし、くたびれているのかもしれません。
主人公の二等兵は、けれど、何かを感じて立ち止まります。
おじいさんは、その二等兵くんの顔を撫で回し、それから毛布を押し付けます。おじいさんは盲目だったんですね。
あとで合流した高地連隊兵士は、
「こっちの顔も見ずに毛布を押し付けやがって」
と、言います。おじいさんが盲目だってことに気づいてない。
二等兵くんは何も言わない。でも彼が生き残れたのは、そんな言葉にはならないけれど重要なことに、気づく能力を持っていたから、かな、と思ったりして。だからこそ、言葉の通じないフランス人兵士ともうまく協力しあい、要所要所で危険を避けてこれたのかな。
そんな、象徴的なシーンがさりげなく挟み込まれていたり。
映画の終わりも、万事めでたし、な終わり方ではなく、本来なら英雄となるべきパイロットは不時着してドイツ軍に捕まります。
最後に号外を読む主人公の表情にも、考えさせられるものがあります。

観終わって、もう一度観たいかも、それも映画館で、と真剣に思ってしまった。
絶対に、映画館での視聴がお勧めです。
この映画、映像もだけど音が何より重要な役割を、果たしていると思うのです。
息遣いの音、弾薬の飛び交う音、金属に弾が当たる冷たい音。

DVDはストーリーの確認にはいいけど、この臨場感を味わうには、大画面でしっかり音響効果を楽しめる映画館が、やっぱり良いと思う。