とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

ルイの九番目の命


猫には九つの命があるそうですね。
100万回生きた猫もいるそうですけど。
八つ目まで使ってしまったら、どうするのかな。

来年、日本でも公開される映画の原作です。
面白そうだな、と思って借りてきました。
面白かったです。
ストーリー展開はだいたい予想がついちゃうんですけど、それはそれで、とついついページをめくってしまう。
お仕事がお休み中でよかった。
すっかり夜更かししてしまいました。

ネタバレ全開ですので、興味がある方は読まれてからよろしくです。

冒頭は主人公のモノローグから始まります。
この時点で、すでにどういう話なのかは、予想がついてしまう。
代理ミュンヒハウゼン症候群は、よくサスペンスものでは扱われるテーマですし。
だからって、「あ、なんかオチも検討つくし、もういいや」じゃなくて、
「え〜なになに、詳しく教えてくれる?」
という気持ちで読み進めてしまいたくなる。
やっぱり母親と子供の関係性って神話の時代から、色々な形で語られてきた大きなテーマの一つですもの。

主人公は9歳にして、もう数え切れないほどの事故に遭っている。
お母さんは、そのせいでかなり過保護気味。
息子べったりで、夫ともうまくいかない。
少年は頭もいいし、勘も鋭いけど、そのせいか情緒障害児として学校では持て余されている。カウンセリングにも通っているけど、カウンセラーを手玉に取ったりしている。

話は、その少年がすでに最後の事故に遭い、植物状態となったところから始まります。
主治医となった神経科医は、幼少期に夢遊病を患っており、ちょっと一癖ありそうな怪しい感じの人です。

その医者と少年の視点から交互に話が語られていきます。
話のキーパーソンである母親を、少年も医者も、事件の主犯とされている少年の継父も、とても愛しているのですが、その”愛”がちょっとずれてるのですね、そして不幸が始まります。
それは、母親自身に問題があるから。

舞台は、田舎の古い歴史を持つ病院。
植物状態となった少年が、今後の療養先としてその病院に転院になったところから、話が始まります。
超常現象としか思えないことが、起きたり、霊媒が絡んだりして、オカルト?と思わせる展開ですが、最後はああやっぱりそこ、と言う終わりです。
映画は見ていませんが、原作では、それほど後味の悪い終わりではありません。

結論から言うと、異常な親とその親の歪んだ愛に応えようとする子供、のストーリー。
親も親なら、子も子だよ、と言ってしまえば身も蓋もないのですが、決して言語化されることのない親の異常な愛の形を、言われずとも感じ取って応えようとしてしまう子も、また親の気質を受け継いでいるからこそ、ちょっと尋常じゃないのかしら、と思ったりして。

作品ではさほど大きな役割ではありませんが、少年の継父とその母親との関係も、また母ー息子関係。そちらは、初めはよくある歪んだ関係か、と思われるのですが、実はある意味健全な関係性だったのだとわかります。
語る側によって、聞いた方の受け取り方が変わっていく。
本当の嘘つきは、嘘をつかない、と言う諺を思い出したりして。
いずれ迎えるであろう嫁についての心構え、として読んでも、役立つかもしれません。
ここまで極端な嫁は、普通いないでしょうけどね。

イギリス人女流作家は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズがそうですが、母親ー息子の関係性がモチーフになっている作品が多いような気がします。
そういえば、どちらの作家さんも男の子の母親ですね。
うちにも男の子がいたから、わかるけど、ほんと、男の子って目が離せないって言うか、ろくなことしないって言うか。

その辺の、母親の複雑な気持ちが作品の細かいところに現れていて、それがこの作品に現実味と厚みを与えているような気がします。


あとがきを読んだら、現実に身内に起きたピクニックでも悲劇を元にしているとか。

本当に、子供を育てるお母さんは大変、なんです。
でも、子供だって色々大変なんです、ね。