とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

御社の働き方改革、ここが間違ってます!〜を読んで

経営者向けの本、みたいなタイトルですが、中身は違います。(多少はそういう面もあるけど)
働き方改革についての変遷や、現実に対処している会社への取材、今後への提言が述べられています。
彼女の著書『専業主婦になりたい?』を読んで、その鋭いツッコミが面白かったので興味を持ちました。

図書館の在庫になかったので、kindleで購入してみました。
結論、kindleは「これってどの辺に書いてあったっけ?」というような読み返しをしたり、ぱらぱらとつまみ食い的に読んだり、という読み方には向かない、ということ。
それに、ちょっとページをそのままにして、他のことをしていると、勝手に暗くなってる(バッテリーを保存するためには仕方ないのでしょうけど)。
なので、感想文を書こうと思うと、すごく書きにくい。

250円の差額をどう考えるか、なんだけれども、安くで手に入れたいなら、古書を狙うというてもある訳で、kindleはやっぱり漫画を読む時くらいかなぁ。
場所を取らない、ということと、「こんなもん読んでるんや〜」と思われて恥ずかしい、ということがない、その辺が利点ですね。

さて、本の内容について。
『働き方改革』という言葉が、一人歩きして空虚化していないか?ということをテーマにしていますが、単なるダメ出し目線ではないところが、前に読んだ、常見陽平氏の『なぜ残業は無くならないのか』より、前向きで好感が持てました。

強い者が生き残るのではなく、変化に対応するものだけが生き残る時代なのだ。
「ただの時短だと思うからいけないんです。会社全体が、業界全体が、この会社で良かったと、プライドを持って仕事ができるようになる改革、それが働き改革なんです」〜中略〜
「時短ではなく、会社の魅力化プロジェクトと捉えなくてはいけない」

と、述べられています。

『残業上限規制』についても、「どうせ抜け道が増えて逆に働きすぎに拍車がかかるだけだよ」的な後ろ向き意見ではなく、体育会系のマッチョな職場はもう終わろう、心理的に安心したお互いに優しくできる職場に変わろう、と社会全体が考えるきっかけというか、潮目になるだろうといっています。

ちゃんと企業を取材して、うまくいっている事例も、ただ持ち上げるだけじゃなくて、やっぱり上が覚悟を決めてやらないとうまくいかないよね、などと批判も入れながら報告しています。

常見氏が、前に働いていたリクルート社も取材されていました。
トヨタが入っていなかったので、彼女が取材したらどうなっていたのかな?と興味深いところです。

著者自身が働きながら、子育てもしているキャリアウーマンなので、やっぱり女性の働き方、を見る視点には鋭いものがあります。
でも、考えてみれば『女性』というのは、男性しかいない会社には異分子なので、その異分子の処遇を見ることで、その会社の『従業員』に対する考えがよくわかる。ということも言えるのではないか、と思いました。
どの人も皆、個人的事情と背景を持っていて、働いていない時間に何をするかは、それぞれの事情によって違う。
その一番違いがわかりやすいのが、『女性」な訳で。

『女性』の扱い、ということでは座談会も載せられています。相変わらずのジェンダー差別ネタがいっぱい。
もう、その未だに変わらないおじさんたちをあげつらうのはやめようよ、と思うけど、ここは一応、触れておかないといけないんだろうな。

面白かったのは、第5章の”『女性に優しい働き方』は失敗する運命にある”で、取り上げられた資生堂ショックの話。
結局、出産して働き続ける女性が少数派だった頃には、なんとか周りがサポートしてやりくりできていたようなシステムでは、ワーママが多数派になったら破綻するよね、という話。

女性たちが「会社に留まることができる」ようにはなったが、その結果として「女性に優しすぎる制度」がつくられてしまった。言い換えるなら「子育てをする女性には優しすぎて、子育てをしない女性には厳しすぎる」制度だ。
女性比率の高い会社では、制度を利用する人が大量に出てきて、一部の人に負荷がかかりすぎるという問題が出てきてしまう。その職場の「ギスギス感」が無視できない生産性の低下にもつながってくる。

そりゃそうだよね。
周りの負担をあてにしたシステムじゃ、遅かれ少なかれ限界がきます。

妻がワンオペ育児の世界は、夫が二十四時間戦うビジネスマンの世界でもある。

それじゃあ、子供はどんどん減っていくだろうし、さらに年取っても、長時間働くしか生きる道のない社会は、疲弊してくしかないよね。
そういうことに、そろそろみんな気がつこうよ。
と、著者は言いたいのだと思います。


『女性に働いてもらわないと、国としては税収は減るし、介護や生活保護だなんだで、支出は増えるしで困るから、働いてもらいたいんですよ』
という身も蓋もない現実的な理由で十分だと思うのです。

現にフランスでは、女性が働かないと労働力が減って困るから、という理由で育児支援を行なったところ、それが結果として少子化対策になったそうです。
”二人目の壁”という言葉があるそうですね。
子供が欲しいと思っても、様々な制約があって二人目を持てない家庭が日本では増えているらしい。
うちも、相方のおじさんは子供は三人くらい欲しかったみたいだけど、私がこれ以上のワンオペ育児(当時、そういう言葉はなかったけど)は御免蒙る、と言って諦めてもらった経緯がある。

そういえばフランスやドイツでは、強制的に父親に育休を取らせる制度があるそうです。国が制度を作ってでもやらないと、動かないことってあるのです。

”やりがい”とか、”生き生き”とか”キラキラ”とか、そういう言葉はいらないの。かえって、胡散臭いです。

働いてもらいたいの、税金払って欲しいの。
だから、働きやすい社会にしてあげるから働いてね、とはっきり言っちゃえばいいのです。
その代わり働きやすさについて、ちゃんと考えてね。

だから、第5章の『最後の働き方改革の時代に求められる能力とは』の項は、おじさんたちにじっくり読んで欲しいな。

霞ヶ関も官僚たちも、女性が増えて、働き方を考えよう、という方向になってきているそうですね。

だいたい、子供が欲しくないって思う人は、社会のごく一部だと思うのです。
だって、生き物なんですがから。
種の保全、”産めよ増やせよ地に満てよ”は、DNAに組み込まれていると思うのです。
でも、それができないのが今の日本の働き方。
やっぱり、変えていかなくちゃ。

2016年初めには「実現なんて予測できなかった」働く時間の上限が今は実現しようとしている。飲酒運転や禁煙を考えてみて欲しい。私が会社に入った頃は、オフィスで隣の人がタバコを吸っているのは当たり前だった。条例や法律ができて、今やそんな状況は考えられなくなった。みんなが良い人だったからではない。「当たり前は変わる」のだ。
「日本人は実現度が高まるとオセロのようにそちらになびく」とある人に言われた。
世の中はノロノロとでも確実に動いているし、働きかたの問題が動いたのは、この問題に興味を持ってくれた皆さんのおかげに他ならない。署名してくれた人、ネットで賛同、発信してくれた人、アンケートに答えてくれた人、多くの人の力が社会を動かすのだ。
そして、「何かを変えたい」と思う人は、ぜひ「一歩でも現実を進めよう」という思いを持つ仲間と、ちょっとの違いを乗り越えて協働して欲しい。実現度が確実に高まる。

こんな風に、言われたら、協力しないわけにはいかないと思いました。
ただの田舎のしがないバイトのおばさんだけど、出来ることがあるかもしれない。
考えてみようと思いました。