とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

バリー・シール〜観て来ました

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別にトム・クルーズのファンというわけではないのです。
『ザ・マミー』では、妙に若作りで痛々しい気がしたくらい。
相方のおじさんとの会話では、整形疑惑まで持ち上がってましたっけ。

今回のバリー・シールでは、ちょっとくたびれたやさぐれ感が、いい感じでした。
もともと、演技力もある俳優さんなんだから、無理に肉体美にこだわらずに、演技力で勝負すればいいのに。

映画は実在の人物を元にしています。
アメリカの外交政策がいかに悪辣か、ということをある意味さらけ出すストーリーなので、その筋に気を使ってか、最初の方でバリーがこずかい稼ぎに、こっそり密輸をしているシーンを出したりして、もともと、倫理観に問題のある人物であることをさりげなく強調している。
CIAの依頼で反政府軍の基地の写真を撮ってくるのが、最初の頃の仕事ですが、そこで接触して来た麻薬カルテルの幹部に誘われ、麻薬の密輸に手を染めます。
その時の、あっけらかんさ。
なに、運んで欲しいの?
お金もくれるの?
いいよー。
って感じ。
良心が咎めるとか、心の葛藤を感じるとか一切ない主人公を、トム君が実に清々しく演じています。

それはそれは楽しそうにやっているから、かえってこういう人だったんだろうな、と現実味がある。
義理の弟が暗殺された後も、全然、嫌になっている風もなく、楽しく仕事をしている。
最後に追い詰められて、今までの犯罪を(多分、司法取引に使うため?)自撮りするシーンがあるけど、葛藤を抱えていた感じはない。

何度か密輸もバレて、立場が危なくなるけど、結局、また他の仕事を与えられて、なんとかなるあたり、腕がすごく良かったのでしょう。
でも、その度に接触してくる麻薬カルテルの幹部とまたよりが戻っちゃって、なんか性懲りもないというか、学習しないというか。
危険なことをやってうまく逃げ延びるってことに、スリルとやりがいを感じるタイプの人だったのかな。
お金にもそれほど執着してた感じはない。
奥さんに家族を養ってよねっ、と迫られるので、ちょっと多めにもらいたかっただけ、という印象です。
トム・クルーズが演じると、どうもマーベリック大尉の成れの果て、という感じがしてしまうけど、それはそれで楽しい。

告白シーンでも、
ちょうど、いい話が来たから乗ってみただけ。
そしたらめっちゃ金が入っちゃってさー。
いやぁ、参ったよ。
現金ってほんと、場所取るんだよねー。
隠し場所がなくなっちゃってさー。
という感じで反省の色が全く、無い。

そういえば最近の犯罪ものだと、お金は全部銀行送金だもんね、現金をそのままスポーツバッグだったり旅行鞄だったりに入れて、「ほい、お疲れっ」みたいな感じで渡したりってしない。
その辺の細かいことが時代を感じさせます。
それにインテリア。
当時のアメリカのホームドラマを思い出して、懐かしい。
ほら、フルハウスとか、チャーリーズ・エンジェルズとかあったじゃないですか。
義理の弟とか、奥さんの髪型もなんか懐かしい。

あんまり、のほほんと話が進んでいくから、サブタイトルも『アメリカをはめた男』ってあったし、うまいことFBIかなんかの証人保護プログラムでも受けて、逃げ延びちゃうのかな、と思ったら、最後はダメでした。
そこが実話らしい。

観ていてなぜか、三国志曹操の逸話を思い出しました。
曹操の宮殿に、才能はあるけど人格に問題のある歌手がいて、ある時犯罪を犯すのだけれど、曹操がその才能を惜しんで、罰することはせず、その歌手に匹敵する才能のある後輩が育つのを待って、それから殺した。という話。

バリー・シールでも、最後に、彼が麻薬カルテルの幹部と写っている写真が流出して、それで裏切りがバレて『始末』されちゃうわけですが、CIAとしても、この辺が手を切る潮時、って思ったのかもな。
だってバリー君たら、何度大目に見てもらっても、すぐまた横流しとか密輸とかしだしちゃうんだもの。
そういう意味では、アメリカもはめられていたわけですね。
確かに、愛国心のかけらもないお人柄でした。

わたし的には、グリーのシュースター先生の奥さんのエマ役で出ていた女優さんが、相変わらずのギョロ目で検事役を好演していたのが、嬉しかったです。