とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

ユービック〜を読んで

”バーナード嬢曰く”で言及されていた、ハヤカワ文庫版ユービック。
そういえば、昔、読んだな〜。
でも、全然覚えてないわ。
どこかになかったけ?と探したら、ありました。
それも、ハヤカワ文庫版。
確かに裏表紙に、思い切りネタバレが。
しかしながら、これだけネタバレされてても、なおかつ、どういう話だか、皆目見当がつかないのは、さすがは(?)ディック。

ディックの世界って、なんか登場人物がみんなくたびれたサラリーマンみたいで、読むとこっちもなんだかくたびれてくるんだけど、そこが癖になってしまって、つい読んでしまう。

舞台は、死者が半生状態という、身体は死んでるけど、脳の活動は生きていて、然るべき施設で然るべき装置を使えば、生きている人とコンタクトが取れる、という世界。
そして、超能力者が普通にいる世界でもある。
その超能力を中和する能力(これも一種の超能力ですかね)を持つ人々を雇って、超能力者に対抗する活動をしている企業の社長とその部下たちが出てきます。
社長と、次期社長とされている主人公だけが、普通の人で、他のメンバーは皆、超能力の中和能力をもたった超能力者たち。
主人公は、超能力者がどんな能力を持っているかを測定する技師で、その技術力は右に出る者がいない、という設定。

本作でも主人公含め、みんな疲れてます。
世界的に有名で、ものすごく儲かっている企業のはずなのに、その社長は妙に悲観的で、行きづまり感半端ない。
冒頭で、共同経営者である奥さんのところに相談に行くのだけれど、彼女はすでに身体は死んでいて、半生状態でスイスの死体安置所にいる。
いろいろ相談したいのに、ジェリーと言う名の10代で早世した少年が、割って入ってきて訳がわかんなくなる。
ジェリーは、死者の精神を食らって自分だけ強くなってるのでした。
このジェリーが、ラスボスなんだけど、流石にハヤカワ文庫さんでもそこまでのネタバレはしてない。

さて、次期社長とされている主人公は、いつも金欠で社会生活不適応者みたい。
他の特殊能力者たちも、普通じゃない感じ。

ある日、すごい儲け話がやってきます。
ついつい乗ってしまう社長。
ミッション遂行のために集められた最高の能力を持つメンバーが月に行きます。
普通に自家用ジェットみたいな感じで、社用車で月に行けるみたい。
その割にはエレベータがボタン式だったり、情報がプリントアウトされてきたり、ちょっとレトロでサイバーパンクっぽい。

さて、月についてどんなミッションか、という話になったところで、実はそれは罠だとわかり、まんまと罠にはめられた主人公たちは、暗殺されてしまう。

最初、死んだのは社長の方で、生き残った部下たちが必死に、社長を地球に連れて帰って、社長の共同経営者である社長の奥さんのところに相談に行こうとするんだけど、その道中にどんどん、周りの物が古くなっていって、1939年代になってしまう。
時々、死んだはずの社長がメッセージを送ってよこしたりするので、なんかおかしいよね、と言っているうちに仲間が一人、また一人と死んで行く。

と思わせて、実は死んだのは部下たちの方で、生き残った社長が、部下たちをまとめて半生状態にして、なんとかコンタクトを取ろうとしていたのでした。

と、これが最終的なオチじゃないところが、ディックの悪夢的なところで、最後は社長も主人公たちと同じ悪夢に取り込まれて行くところで、終わって、何がなんだからさっぱり、という読後感。
そういえば昔読んだ時も、なんじゃこれ?と思ったような、それであんまり記憶に残ってなかった気がする。

なぜ時代が1939年まで逆行して止まるの?とか、結局ユービックってなに?とか、何一つ説明されないまま話が終わります。
なんか書いてたら、規定ページまで来たんで、終わります、的な。

でも、色々解釈されているみたいですね。
一応、代表作の一つになっているらしい。
ディックの作品って、ヴァリスとかみたいに、もっと、よくわかんないのもあるから、これはまだ読みやすい方かも。

時間を持て余してて、でも何か積極的に活動するには意欲がわかなくてね、みたいな時には、おすすめです。