とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

そもそも島に進化あり〜を読んで

順番でいうと『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』の前の作品に当たりますが、『鳥類〜』の方が人気があるみたいです。
図書館で借りた本の時点で、『鳥類〜』は発行から3ヶ月で八刷になってましたけど、こっちはまだ初版のままでしたもの。

でも、個人的にはこちらの方が面白かったです。
著者は”鳥”が好きなのではなく”島”が好きなのではないか、という疑惑が果てしなく湧いてきます。

島の分類、成り立ち、特徴についての説明もわかりやすくて面白い、どうでも良さそうなところに必ず美女が出てくるところもおじさんチックで可愛げがあります。

生物の進化についての説明に、座敷わらしと河童が例としてあげられていて、面白かった。

後半は、島特有の生態系を守るための苦労が語られます。
外来種による自然破壊の問題点をプレデターやエイリアン、パシフィック・リム、さらにはウルトラマンシリーズを例に説明してくれるあたりに、著者のある方面への深い教養を感じます。

大陸ではさほど脅威でもなく、むしろ有益な動物と考えられている山羊や豚が、島では悪魔の使いになってしまうこと。
エイリアンも、持ち込んだ宇宙人からすると、「うちでは可愛くて良い家畜だったのに、野生化して地球人を襲ってしまうなんて思いもよらなかったよ、ほんとごめんね」なのかもしれません。

猫やネズミも、一度生態系に組み込まれてしまうと、排除することでかえって保護対象の生物の絶滅の危機が早まってしまうこと、保護対象の生物が増えると、今度は場合によっては島に住んでいる人間の生活に不備が生じることなど、自然保護の難しさが語られています。

結局は、現実主義になってある程度のことは黙認しつつ、折り合い点を見つけるしかない。
でも、実はそれが一番難しい。

本を読み進んでいくと、あるところで、鳥類学者がいつのまにか”島”類学者になっています。
やっぱりこの人、鳥類学者とは仮の姿、本当は島大好き、島類学者だったのね。

その彼がこよなく愛する島の特異性や魅力、その存在の重要性が、旅行ガイドとは全く違った視点から書かれていました。

この本を読んで、島に行ってみたくは全然なりませんでした、だけど、島の保全のために税金を使うのは仕方ないんだな、と思いました。