とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

定年後〜50歳からの生き方、終わり方〜を読んで

図書館で予約待ち2ヶ月あまりの末、やっと借りてきました。
見ると私の後すでに二十五人待ちになっている。

すごい人気だ。

著者は、36年間務めた保険会社を定年で退職したのち、”定年後のサラリーマンが第二の人生をいかに生きるべきか”、をテーマに取材や研究をしている人です。

あちこちで講演会や、研修会、ワークショップを開催もしているようですね。
私も、同じテーマの雑誌記事から知りました。

他にも著作はたくさんあるようです。
もともと経理関係のお仕事をされていた方のようです。
こういう事務方の人の方が、実は会社についてよく知っているし、定年後の仕事って幅広くあるのかな、と思ったりして。

ただ、前半はご自身の経験談とか、取材による聞き書きがメインで、男性サラリーマン、それもある程度の立場の人が読むと、すごく見につまされるのだろうけど、私ごとき身分の人間には、いまいちピンとこない。

第3章『亭主元気で留守がいい』あたりに入ってくると、日本のおじさんの居場所のなさ加減が、容赦なく書かれていて面白くなってきました。
会社という、一つの閉鎖され完結していた社会から外れて、一人になると、群になることができないおじさんは、大変だ、ということがいろいろ書かれてます。

かと言って、家にいると妻の負担が半端ない。
病気になる妻もいるということも書かれています。
著者自身、今の仕事でレンタルオフィスを借りているが、自宅で執筆しても良いので、そうしようか、と妻に言ったところ、即答で『このままレンタルオフィスで仕事をしてくれ(四六時中家に入られては困る)』と言われたそうです。
私も、相方のおじさんが定年後、ずっと家にいるようになったら、ちょっと嫌だな。
てか、週末でも一日家にいると鬱陶しいもんね。

ここで著者は、女性と違って、男性は『群れることができない生き物』だと言っています。
けど、男の子と女の子を育てて観察した結果と、自分も仕事をしてきた経験から言わせてもらうと、男性が群れることができない生き物だ、というのは間違いだと思う。
むしろ、男性は本能的に群を作りたがる生き物だと思う。

ただ、男性の作る『群』は女性の作るそれとは違って、上下関係や力関係が大きく作用していて、構成員の関係性が非常に複雑かつ緻密なので、一つの機能する『群』を作るまでに、時間と労力がものすごくかかるのだと思うのです。
だから、女性と違って男性は気軽に群れたり、離れたりができない。のだと、思います。

だって、映画でも小説でも、異種業の男たちがやってきてチームを組んで、一つのプロジェクトを成し遂げる系の話って多いけど、大抵、まずまとまった『チーム』になるまでに一波乱ありますよね。
でもって、やっとチームがまとまって話が動き出すと、そこからはやたら早いんだけど、また途中でまた何かしら事件があったりして、最後のクライマックスでは、お互いの信頼を試すような事があって、すったもんだの結果、なんとかなって、ラストで新しいチームが出来上がって、めでたしめでたし。

映画だから、決まった時間内にチームは無事結成できるけど、実生活ではおそらくもっとかかる。
てか、現実の世界では、会社に入って定年で辞めるまでの時間を費やして群を作っているのが、男性にとっての『群』なんだと思う。
だから、その群を離れた後で、おいそれとまた新しい群を作るのは、なるほど、労力もかかるしエネルギーもいるし、一旦作ったらそうそう簡単には離れられないし、で、難しいのだ、と思うのです。

結婚だったり、出産だったり、子育てだったりで、何度も所属する『群』がコロコロ変わり、おかげでゆるい『群』を作ることがストレスでもなんでもない、女性からしたら、なんで出来ないの??という感じで見てしまうのですが、それこそがおじさんの問題点なのではないでしょうか。
会社員の忠誠心や会社への同一感って、女性である私から見ると一種異常な感じがしなくもない。

たぶん、昔の村社会では、その出来上がった『群』がそのまま一生続いたわけで、ストレスもなかったのだろうけど、都市生活者、会社員となると、そういうわけには行かなくって、今の居場所のないおじさん問題となっている。

で、どうしたらいいのか?

身も蓋もない言い方ですが、いくら大変でも、新しい『群』の一員となるしかないでしょう。
だって、人間は『群』を作って生きてきた社会的動物なんですもの。
独りでは、やっぱり生きてはいけないのです。

本能的に向いてないとか、苦手だからと言って甘えていたら、世の中渡っていけませんのよ。
そもそも、人間は『本能が壊れている動物』でもあるのですから、この際、理性的に捉えて動きましょうよ、と思います。

で、この著者は、本能がどうとかそういうことは言ってませんが、やっぱり、早いうちに会社以外の自分の『居場所』を作るべきだと言っています。
その時には、なるべく子供の頃に好きだったことを中心に考えると良い、と助言しています。
そりゃそうよね、好きでもないことをやっても続きませんもの。

社会と繋がるためには、自分の得意技と他人や社会のニーズをつかむ力をしっかり蓄えるように、と提言しています。

そのためには、世の中を広く知ることも大事じゃないかな。
ついでに、素直に社会と向き合うことも大事でしょう。

会社でいくら偉くても、会社を辞めたらただの初老のおじさんにすぎない、ってことを自覚しないとね。


というわけで、相方のおじさんに読ませるといいかもしれない、と思いました。