とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

グリンゴ


出典:gringo.jp



日曜日、珍しく家にいたうちのおじさんが『ねえねえ、映画観に行こう』と言い出しました。
世の中はコロナウイルス騒ぎで、人々は皆、不要不朽の外出を控えてる最中、出かけるとな?

おじさん曰く、皆んなが一斉に外出を控えるから、町は閑散としてるはず。
こういう時こそ元気な我々が外に出て、多少なりとも経済活動に貢献しないと。

そういえば奴は、牛レバーからO-157が出て、全国の焼肉屋さんやもつ鍋屋さんが空っぽになった時も、『こういう時こそ、行かないと』と言って、もつ鍋食べに行ったんだった。
(自分はレバー食べられないくせに)

まあ、鹿児島は未だ感染者は出ておらず(3月17日現在)。
ニュースで感染者の出た県を赤く表示している地図を見るたび、いつも灰色の鹿児島県が、なんだか物凄い僻地に見えてくる今日この頃。

地元住民の間では、鹿児島にはコロナウイルスの検査キットや検査のできる医療機関が無いからではないか(そんなことはさすがに無い)という噂が、まことしやかにささやかれているとかいないとか。

そんな状況でもあり、せっかくの日曜日ですので、街まで出てみることにしました。

普段から東京や京都、大阪と比べて格段に人の少ない鹿児島市ですが、やっぱり少ないな。

天文館にある映画館、その名も天文館パラダイス。
昔はここにしか映画館がなかったのですが、今は中央駅や与次郎が浜のほうに巨大シネコンができて、すっかり地位が下がっております。

数年前にリニューアルしたものの、やっぱり経営が心配になるほどの客の入り。
普段から客は少ない映画館で、ほぼ貸し切り状態なのですが、今回、観て来た映画は、お客がそれなりに入っていて、逆にびっくりしたりして。

ということで、『グリンゴ』観てまいりました。
コーエン兄弟のファーゴが好きなら、はまる、と思う。
私も大好きです。

主役のデヴィッド・オイェロウォのいかにも情けなさそうな気の弱い顔が良かった。
シャーリーズ・セロンの完璧に整った美しいお姿とか、みてるだけでも目の保養。
個人的に好きなアマンダ・サイフリッドタンディ・ニュートンもちょい役で出てたし。

話の細かいところも、ちゃんと伏線回収となってて、スッキリ感が半端ない。
スピード感のあるアクションあり、コメディあり、と面白かったです。

ここからはネタバレ全開ですので、そういうのが嫌な方は、御注意を。






"GURINGOグリンゴ”とは、スペイン語で『よそ者』を意味するスラングだそうです。
メキシコでは、アメリカ人を小馬鹿にして呼ぶ時の言い方だそうです。

古いけど、日本語だと“アメ公”みたいな感じかしら。

予告では、主人公こと“最強の悪運男”ハロルドがグリンゴ、なのかなと思いましたが、そういう意味だとわかると、他のアメリカ人たち全部を指してグリンゴと言うことなのかも。

メキシコを舞台に、よそ者アメリカ人たちが、バタバタと騒ぎを起こすストーリー。

主人公ハロルドは、ナイジェリア移民のアメリカ人。
お人好しすぎて就活に失敗。
大学時代の友人リチャードが経営する、製薬会社の在庫管理を任されています。

妻のボニーはインテリアデザイナーで、リチャードの新居のデザインを請負中。

とはいうものの、在庫管理部長とは名ばかりで、リチャードと共同経営者のエレーンは、会社のメキシコ工場で作っている薬を、メキシコの裏社会を通じて横流ししており、その上、妻のボニーはリチャードと浮気をしていました。

リチャードは、エレーンとも付き合っていて、シャーリーズ・セロン演ずるエレーンは、頭がセックスとビジネスのことしかない、ちょっとモンスターじみたエグゼクティブ。

こういう、下半身と金=権力に思考が集中している人間を、ギラギラしたオヤジではなく、人形のような金髪の美女に演じさせる、というのもそろそろステレオタイプな気もしますが、シャーリー様だとそれすら『それが何か?』とあっさり蹴散らかして演じてる感が好きだな。

それをいうなら、リチャードも拝金主義者のサイコパスだし、他にも出てくる奴、出てくる奴、みんな変。

こういう変な奴がたくさん出て来て、話が錯綜してごちゃごちゃするストーリー展開は、大好き。

まず、メキシコ工場の薬品不足が判明。
在庫管理担当者としてハロルドが、メキシコに行こうとしていたら、いきなりリチャードとエレーンが無理やり同行して来ます。

それもそのはず、リチャードたちはハロルドに内緒で、薬を横流ししていました。
薬は医療用麻薬。
一部をメキシコのマフィア、ブラックパンサーを通じて横流していたのです。

さらに、リチャードたちはそれがバレる前に、内緒で会社を外資に売り払う魂胆でした。

ところが、偶然ハロルドは会社売却の噂を、聞いてしまいます。

まさかと思いつつも、これまた偶然のきっかけで、リチャードのコンピュータから情報をコピー。

一緒に行ったメキシコでは、エレーンとリチャードが会社売り払って、自分は切り捨てられる予定だ、と知ってしまいます。
どおりでメキシコ工場でも工場長とのミーティングでは、自分だけ外されていたわけだ。

さらにそのことを、妻のボニーに愚痴っていたら、まさかの浮気の告白&離婚の申し出。

二重のショックで、愕然とするハロルド。

ここでなぜか、自棄になったのか身の回りのものだけ持ってホテルを飛び出すハロルド。

時を同じくして、工場長は薬の横流しを止めるようリチャードに言われ(会社を売る予定だから)、その件で、マフィアのボスを訪ね、ハロルドが薬の金庫を開ける鍵(指紋登録)の持ち主だと話してしまいます。

このマフィアのボスが、ビートルズが好きだったり、やたら発作的に暴力を振るったりする、いかにもな曲者。

ボスに命じられてハロルドを探す、工場の運転手エンジェル。
と、その他のヤクザものたち。


並行して、とあるアメリカの下町での若いカップルの話が進みます。
楽器店で働いているサニーとマイルズ。
マイルズは不良仲間に誘われて、リチャードの工場で作っている麻薬のサンプルを運び出す仕事を、請け負います。

事情を知らずにカモフラージュも兼ねて、マイルズにメキシコに連れて行かれるサニー。

サニー役を、マンマ・ミーアでソフィを演じていたアマンダ・サイフリッドが、やっています。
こぼれ落ちそうな大きなお目目で、いつ見ても可愛い。
誰からも見捨てられたハロルドに、優しい言葉をかけてくれる、天使役のサニーが、似合ってます。

ホテルを出たハロルドは、ふらふらと下町の安ホテルに逗留。
ここでもお人好しぶりを発揮して、フロント係りのロナルドとエルネストに、いいようにぼられている。

何を思ったのか、ハロルドはロナルドとエルネストに協力を依頼して、リチャード相手に狂言誘拐を企てます。

会社が懸けている保険金を騙し取ろう(せめてそのくらいはやってやる)と思ったらしい。

ところがリチャードは、その保険を更新していませんでした。

なに、それ、酷くない?!

保険も無しで、危険なメキシコに何度も出張させてたわけ?
と、またもや激おこなハロルド。
アメリカ人の怒りのツボは、そこなんだ。

ハロルドの狂言誘拐を信じたリチャードが、頼った先はなんと兄のミッチ。
ミッチは元外人部隊員で、外交官暗殺もしたことがある凄腕の仕事人でした。

ただし、今は改心してハイチで人道救助をしています。

格安料金、とはいえハイチでの活動資金には十分な金額を提示され、ハロルド救出を請け負ったミッチ。

一方、リチャードのあまりのひどいやり口に愕然としたハロルドが、居酒屋で酔っ払っていると、ブラックパンサーの手下たちがやって来て、本当に誘拐されてしまいます。

と、ここでまた、なにを思ったのか自棄になったのかハロルド、誘拐犯に襲いかかり、油断していた手下が同士討ちになって、車は崖の下に。

とっさにシートベルトをしていたハロルドだけが助かり、ふらふらと道を歩いていると、通りかかったサニーとマイルズのカップルに助けられます。

サニーは、偶然にも同じホテルに泊まっているハロルドを、偶然、空港でも見かけていて、それで助けてくれたのでした。

裏切られ、怪我をして、身も心もボロボロのハロルドと、会話を交わすサニー。
ほっこりします。

ところがマイルズは、ハロルドが場違いに良いスーツを着ていることから麻薬捜査官だと疑っていました。

そこに、ブラックパンサーにハロルドを売って一儲けしようと目論むロナルド&エルネスト・コンビが乱入、またもや誘拐されそうになるハロルド。

そこに乱入して来たミッチ。
ロナルド&エルネスト・コンビを倒して、ハロルドをあっさり連れ去ります。

保険の書類を調べていて、誘拐保険はダメだけど、死亡保険はまだ有効だったと気づいたリチャード。

ハロルドを殺して保険金を手に入れようと、ミッチに持ちかけます。

ハロルドの負け犬っぷりについほだされて、ハロルドの狂言九回に乗ろうとしていたミッチでしたが、保険金の額に、心が揺れてしまいます。
またもや裏切られて、殺されそうになるハロルド。

このミッチとハロルドのユダとペテロについての会話が、面白い。
結論が出ないままに終わるだけに、心に残ってしまった。

金か良心か。

ミッチが迷った瞬間、ロナルド&エルネスト・コンビが、ミッチを車で跳ね飛ばし、ハロルドはまたもや誘拐されてしまいます。

連れて行かれた先は、ブラックパンサーのボスの家。
ハロルドの指紋を使って、工場の薬を奪うつもりのボス。

エンジェル他手下たちに、連行されるハロルド。

時同じくして、トバッチリでミッチにのされていたマイルズは、なんとか工場に辿り着き、工場長の助手から受け取った麻薬のサンプルを持ち出そうとしていました。

助手のヴェガは工場長の目をかすめて麻薬を持ち出し、コピーした合成麻薬で一儲けしようとしていたのです。

ぼや騒ぎをおこして、どさくさにまぎれて工場を出ようとした矢先、ハロルドたちがやってきてしまいます。

マイルズはハロルドを見てとっさに、『やっぱ、あんた麻薬捜査官だったのか』と口走ってしまいます。

ところが、そこには本当の麻薬捜査官が潜入していました。
運転手のエンジェルです。

マイルズの一言に、エンジェルが挙動不審となり、仲間同士で撃ち合いに。
そこに、エンジェルの通報で警察隊が現場に続々と到着。
銃撃戦が始まります。

エンジェルに連れられて、現場を脱出するハロルド。

ブラックパンサーの手下たちとのカーチェイス
もう、なにがなんだか、の状態のハロルド。

と、とにかくシートベルトね。
ハロルド、真面目なやつなんだな。

と、そこで車がまたもや横転。
大怪我を負ったエンジェルが、追いついて来たブラックパンサーの組員に撃たれそうになった瞬間、ハロルドが拾った銃で応戦してくれて、休止に一生。

と思ったら、べつの組員が到着して絶体絶命のハロルド。

と思ったら、復活して追いかけて来た不死身の仕事人ミッチが追いついて組員を撃ち殺し。
助かった、と思ったら今度はミッチが組員に撃たれて、その組員がハロルド(?)に撃たれて、そして誰もいなくなった

いやいや、ハロルドとエンジェルは、辛うじて生き残っていました。

ハロルドは、エンジェルにリチャードの会社の情報を渡します。
それがあれば、リチャードを有罪に持ち込めるのです。
『もう、国に帰る気もしないし、いくところもない』

と嘆くハロルドにエンジェルは、『いまなら銃撃戦で死んだことにできる』と告げ、新しく人生をやり直すために、その場を去ることにしたハロルド。

どうするのかな、と思ったら、ミッチの乗って来た車を頂いてました。

ミッチはプロだけあって、偽造パスポートや高額の現金を常備してた。

さてその後。

アメリカでは、銃撃戦の犠牲になったハロルドの葬儀が行われ、妻ボニーは悲嘆から激太り。

リチャードは逮捕。

何故か、エレーンは被害者ということでお咎めなし。
ちゃっかり、合弁相手の会社のトップとうまくやってます。

この人はこの人でいいのか。
なんてったて、シャーリーズ・セロンだもん。

ハロルド・ソインカから、ハリー・バーンズと名を変えたハロルド。
ハリーのお店、という海辺のおしゃれなカフェバーの経営者となっています。

そういえば、ジェイソン・ボーン・シリーズでも、第一話のラストは海辺のおしゃれなカフェバー経営してましたっけ。

海辺のおしゃれなカフェバーを経営するのって、アメリカ人の憧れ、なのかな。

劇中語られる“ゴリラとバナナ”の逸話や、ハリー・フーディーニの話が、ラストでいい感じに効いてます。

鹿児島では、あんまり派手に番宣されていなかったと思うけど、大当たりの映画でした。