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アガサ・クリスティーの大英帝国〜を読んで


アガサ・クリスティーは多分翻訳された本はほぼ持っていると思う。
実は母方の祖母がクリスティに大ファンで、あの赤い背表紙の文庫本が、祖父母の家にはごっそりとあった。
祖母が生きてる頃にはあまり読まなかったけど、亡くなってから私が全部いただきました。
今でも時折読み返す。
今読んでも面白いです。
英国の昔の中産階級ってこんな感じだったのね。
日本の中産階級と随分と違います。

同じ文庫本シリーズで、クリスティの死後、自伝も出てて、そっちは自分で買ったのだけど、彼女は何度も『自分たちはいわゆるお金持ちではなかった。贅沢な物は持っていなかった』ということを言っていて、だけど『単に、働かなくても暮らしていけただけだ』とぽろっと書いているところがあって、そーゆーのをお金持ちって言うのよって突っ込んだ覚えがある。
イギリスは階級社会らしいから、つい最近まで、今も?このような人種が少なからず生息しているのですかね。

さてこの本は、クリスティの作品と英国の都市計画の変遷を比較して書いてる。
とあるけど、作品の紹介ばっかで都市計画の部分が物足りない気がしてしまいました。
作品の紹介とか、要らんよ。
だって知ってるもん。
それよか、作品に語られなかったイギリスの町とか、その建設の歴史について知りたかったな。
そもそも、イギリスの戦後の都市計画研究のために留学してた専門家だってあるから、期待してたのに。
作品の紹介もしなきゃ、と斟酌し過ぎだのでしょうか。
ご自分の専門分野を、もっとがんがん語っていただきたかったですね。

だって、クリスティの描くイギリスと他の作家さんの描くイギリスって随分と違う。

R.D.ウィングフィールドのフロストシリーズとか、ニック・ホーンビイのアバウトアボーイとか読むと、イギリスも割とどこにでもある町並みっぽいのだけど、クリスティのイギリスは、ジェーンオースティンやダウントン・アビーのイメージです。

クリスティの描くイギリスは、ほとんどがロンドンの高級住宅街か、彼女が生まれ育ったトーキーの風景だそうです。
なるほどそう言うわけでしたか。

日本だったら、広尾とか田園調布とかになるのかしら。
そういうところと、軽井沢あたりのお洒落な風景を描いた作品を読んで、日本ってこんなとこ、って思ってしまうようなものなのかな。

とは言え、何しろ聖書の次に世界中で読まれている作品ですから、イギリスのイメージ=クリスティのイギリス、になっちゃってる人は世界にたくさんいると思う。

お恥ずかしながら、私もそうでした。
イギリスって、なんか気取ってるけど、優雅で上質感の高いイメージ。
昔の同級生でイギリスが好きで、結構長いこと住んでた人が、イギリス人って京都人に似てると言ってましたけど、クリスティの描くイギリス人って、まさにイメージ京都人。
礼儀作法や決まり事にうるさいけれど、センスが良くて生活をおしゃれにするのが上手なところも似ているような気がします。

とはいえ、世界帝国でもあったイギリスが、二つの大戦を経てだんだんと没落していき、領地が縮小していくのに合わせてクリスティの作品も変わって行った、というくだりはなるほど、そういう風に彼女の作品を読んだことはなかったな、と思いました。

また、読み返してみようっと。