とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

やっぱり太らない方がいい

バイトしている病院は救急病院でして、整形外科がメイン。
なので、毎日のように骨折の患者さんの手術が、何件も入ります。
そんなところで仕事をしていると、しみじみ太るのって、生きてく上で色々とリスクだなぁ、と思う。

例えば、先日手術になった患者さん。
体重がかなりオーバーの方でした。
足首の骨折で手術となったのでしたが、その原因が、道でコケたから。
普通に歩いていて、ちょっとバランスを崩して足首をひねったのだそうです。
普通だと、捻挫で済むんだと思うんですよね、多分。
でも足首の骨が、自重に負けてしまったんですね、痛みがひどいからと受診したら、折れてました。

足の手術の場合、通常は脊椎麻酔、というのを行います。
他にも盲腸とか痔の手術なんかでもするので、経験のある方もいらっしゃるかもしれませんね。
脊椎麻酔の時は、手術台の上に横になって、背中を突き出すように丸くなってもらいます。
背骨の間に針を入れて、麻酔薬を注入するんですね。

ところが、太った人の場合、脊椎麻酔をしようと思って背骨の位置を確認するけど、なんと、背骨が、、、無い

いやいや、そんなはずはないのです。
人間は脊椎動物なんですから、背骨が無いわけがない。
と自分に言い聞かせる。

でもね、探れど探せど、背骨が触れない。
分厚い背肉と脂肪に、埋没してしまってるんですね。
なるべく背中を突き出してもらうと触れやすいので、『太ももをお腹にくっつけるような感じで丸くなってくださいね〜』とか『手で膝を抱え込むようにしてみてくださ〜い』とお願いするんですけど、まず、太ももを曲げてお腹にくっつけるという動作が不可能に近い。
その上、抱えようにも、そもそも手が膝に届かない。

厚みのある壁のような背中を、暗澹たる思いで見つめるしかない麻酔医。

なんとか必死で背骨の位置を確認するも、針が肝心のところに届かないっ、なんてこともしばしば。
程よい位置に針を挿入するために、何度も刺さなくてはいけなくて、余計痛い思いをさせてしまうことに。
申し訳ない、と思いつつ、”太ってるからしょうがないね〜”という気持ちもなくはない。
ごめんなさいねm(_ _)m。
しかし手術室スタッフ一同、同じ意見です。

やっとの事で薬を注入できても、今度は手術のために仰向けになってもらうと、息ができない。
時々健康番組などで太った芸人さんが実録放映されてますけど、太った人って、大概、仰向けだと無呼吸になりやすいんですよね。
横向いて寝るように、推奨されてたりします。
でも手術中は、好きな姿勢で寝ていていただくわけにはいきませんから、人工呼吸器を使わなくていけなくなる。
で、人工呼吸器を使うためには、挿管という手技を行わなくてなりません。
これね、喉に管を入れること。
その管を通して、人工呼吸器からの空気を送り込むんですね。
管自体はシリコン製の柔らかいものなんですが、入れるときには喉頭鏡という道具を使う。
喉頭鏡を使うとき、歯が折れたり歪んだりすることがあります。
太った人は、顔の周りや喉の周りもお肉が一杯なので、喉の奥が見えにくかったり、角度的に管を入れにくくて余計に歯を損傷しやすい。
折れた歯が、うっかり気管に吸い込まれるととても危険です。
(幸い私は今のところまだ一度も経験ないけど、未来永劫、絶対に起きないないわけではない)

ちなみに、バイト先の病院ではさらに一歩進んでMcGRATHというビデオ喉頭鏡を使ってます。これは先端がプラスティックでできているので、歯の損傷は起きにくいし、ビデオで見ながらできるので、難しい人でも比較的安全。
(といっても、絶対に大丈夫なわけではありません)

さらに人工呼吸器を使うにあたっては、薬も特殊なものが必要になる。
その薬を使う場合、日帰り手術はできません。
だから、入院費がかかる。
薬代も余分にかかる。

それにね、あんまりにも太っている方の場合は、高度肥満加算がつくこともあるのです。別名『おデブさん加算』
ほんと、太ってると医療費も高くなるんです。

麻酔中のリスクだけじゃなくて、太っている人は傷の治りも悪かったり、菌が入ったときに抵抗力が弱かったりと、ほんと、いいことありません。

ベッドの移動一つにしても、労力が半端ないから、スタッフにも嫌がられますしね。

そんな事情を見知っているだけに、本能と環境に任せて太ってしまうのは確かに気が楽ではあるけれど、やっぱり避けなければ、と思うのでした。
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