とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

翔んで埼玉


出典:映画.com

本当は、クリント・イーストウッドの『運び屋』を観にいく予定だったのです。
それが、何がどうなったのやら『翔んで埼玉』
ギャグ漫画の実写版、で、その上、特定の地域をこれでもか、と言うくらいにディスっている炎上リスク大の映画にも関わらず、大ヒットしているそうな。

滅多に邦画を観ない私たちですが、これは本当に面白かった

なんか疲れてて、もう何も考えずに楽しいもの観たい、裏を考えずに笑いたい、と言う時には、心からおすすめ、です。
上映中も、あちこちでクスクス笑いが聞こえてきてましたっけ。
埼玉および千葉、茨城、群馬を、とにかくボロカスに貶してますが、一巡回ってそれがギャグになっている。
随所にボーイズラブテイストが散りばめられているので、そう言うのが苦手な人には、イマイチかもしれませんが、癖の強い役を、さらに癖の強い出で立ちで役者さんたちがまじめ度全開でやっていて、良かったです。

帰ってきて、アマゾンで原作漫画も買ってしまった。
忘れないうちに、原作との比較もかねてネタバレ全開の感想です。














明治維新後の日本。
東京と神奈川が独立し、周囲の埼玉や千葉、茨城、群馬といった関東エリアの県を差別している、と言うパラレルワールド(?)みたいな世界。
例えば、他県の住民が東京に入るのには通行手形がいるとか、都民しか許されていない場所にうっかり入ると、それだけで逮捕されて百叩きの上、強制送還、と言う目にあいます。
一方で、東京も東京でその住むところでランク付けがされていて、エリートの住む場所とそうでないところとがあります。

そんな世界のエリート中のエリートを養成するのが白鵬堂学園。
クラスは、学生の住む場所で分けられており、一番都会度が高いとされるエリートクラスのA組から、もっとも下級のZ組まで、それぞれに制服も教室も違い、格差は歴然としています。
Z組は、親が仕事の都合で東京に住んでいるけれど、元々は埼玉出身の生徒たちのクラス。
東京都民用の校舎に入ることすら許されない、差別を受けています。
それでも、彼らが屈辱に耐え通学しているのは、白鵬堂学園が特別な学校だから。
とにかく卒業するだけで、東京都民としての資格が得られます。
なんか、出身地域で就職とか進学とかが差別されてる国、あったよな。
もちろん、この作品はそう言うことを皮肉っているわけではありません。
あくまでギャグ漫画ですから。

さて、その白鳳堂学園に、アメリカ帰りの麗麻実と言う少年が転校してきます。
転入したのはトップクラスA組。
美しい転校生にときめく女生徒たち。
早速取り巻きとなって、自治会長の元へ案内します。
自治会長は、東京都知事の息子・百美。
生まれ育ちもよく、優れた頭脳と美貌を兼ね備えた百美は、少々世間知らずなおぼっちゃま。
埼玉県民が差別を受けていることに、何の疑問も持っておらず、むしろ体調不良で医務室に行きたいと希望する埼玉県出身のZ組生徒に『草でも食わせておけ、埼玉県民ならそれで治る』と言い放つ始末。

そんな百美に公然と楯突く麻実。

仕返しに追い出そうとするも、ことごとくやられてしまいます。

原作では、学力テストで競ったり、スポーツで競ったりしてますが、映画ではなんと都会度テイスティング、という空気を嗅いで、どこの地域の空気か、を当てるというテスト。
これだけでも、バカバカしくて笑えます。
このテイスティングの場面、すごく好き。

仕掛けた挑戦をあっさり返され、地団駄を踏んで悔しがる百美。
が、ふとしたことでファースト・キスを奪われ、麻実に恋心を抱きます。

ところが、強引にデートに連れ出した先で、麻実が埼玉県民だとバレてしまいます。
恋しい人が埼玉県民だと知って、動揺しつつも一緒に逃げようと言う百美。
しかし、所沢、と言う言葉を聞いて一瞬躊躇してしまいます。

原作では、この後麻実はいったん埼玉に戻り、実家でレジスタンス活動を開始。
悶々と過ごす百美は、祖父と大物政治家との密談を盗み聞きして麻実の暗殺計画を知り、阻止するためにあえて埼玉へ向かうのですが、映画では、追いついて一緒に池袋に潜伏。
そこから、上野発の常磐線で茨城を経由して埼玉へ入ろうと計画します。

以前は茨城に住んでましたのでね、我孫子、松戸、柏、といった駅名が懐かしい。
原作での茨城の扱いは、埼玉を上回ります。
もう前人未到の未開地扱いです。
東京から差別されるその埼玉に出稼ぎに来ている茨城県人。
埼玉県人に蔑まれている茨城。
作者は新潟出身だそうですが、茨城に何か恨みでもあるのでしょうかね。

残念ながら、映画でも二人が茨城に入ることはなく、柏でヌーの大群に行く手を阻まれてましたっけ。

柏で降りた二人は、千葉県解放戦線の戦士に捕まってしまいます。
実は、百美の家に代々務める執事・阿久津は千葉県解放戦線の指揮官だったのです。
拷問にピーナッツを詰め込むとか、九十九里浜の地引網を引かせるとか、偏見たっぷりのギャグにボーイズラブが絡められてます。

あわやというところで、乱入してきた埼玉デュークの一派に救われる二人。
埼玉デュークとは、埼玉県民でありながら埼玉臭が全くなく、そのため東京都に住んで革命を起こそうとしていた伝説の人物でした。
埼玉デュークのおかげで、一息ついた二人。
そこで歴代の東京都知事が、手形通行制度を利用して私腹を肥やしていたことを知ります。
証拠となる金塊を見つけようと言う百美。
しかし、百美はサイタマラリアと言う風土病に罹患してしまいます。

サイタマラリアねぇ。

ここで客席の人々が、こらえきれず漏らす笑い声が漏れ聞こえてくる。
なんなのこれ、た、楽しい。

ちなみにサイタマラリアに感染すると、身体に『さ』の字の発疹が浮かび上がります。
命の危険さえあるサイタマラリア
治療のため隠密に、埼玉デュークに連れられて東京へ向かう百美。
しかし、道中何者かに襲われてしまいます。

この辺りで原作から話が離れていきます。
と言うより、原作自体が未完でこの辺りで終わってるの。
あとは、映画の方が話を膨らませ、妄想全開、自由自在、得手勝手に暴走していきます。

これぞ映画版の真骨頂。

なぜか無事に自宅に戻り、病気も癒えた百美。
しかし、春日部の麻実の元へは埼玉デューク暗殺の知らせが。
千葉解放戦線は埼玉解放戦線を潰して、その功績で千葉の通行手形制度を撤廃しようと図っていました。

いよいよ決戦が近づきます。

東京都知事は、利潤を生む通行手形制度を撤廃する気は無く、神奈川県知事と組んで裏で手を回していたのでした。
神奈川って、東京と同格だったのね。
そもそも関東圏の住民ですらない、鹿児島県人にはその辺の空気がちょっとわからなかった。
そういえば、ブラタモリで武蔵小杉が憧れの高級住宅街扱いされてたな。

そして、百美は父の執務室を探り、汚職の証拠となる金塊を見つけるため、群馬へ。
この群馬の秘境ぶりも良いなぁ。

そして、いよいよ埼玉VS千葉の戦いが、火蓋を切って落とされます。
お互いの陣営の、地元出身有名人対決が面白い。

そしていよいよ両陣営入り乱れての乱戦へ突入。
ほくそ笑む東京都知事
と、思いきや両陣営とも一丸となって東京都庁へ行軍してきます。
あれ?
いつの間に共闘する関係に?

実は暗殺された、と思われた埼玉デュークは生きていて、神奈川の暗躍を知り、千葉と手を組むことにしたのでした。
そして、群馬から証拠を持って帰ってきた百美も戦いに加わり、父である東京都知事と対決します。

最後は、汚職を暴かれた東京都知事が逮捕され、埼玉と千葉は仲良くなり、新しい未来が。

そして全国に埼玉を広め、全国を埼玉化した二人。
次は世界を埼玉化する目標を掲げるのでした。
世界を埼玉に!?
どんだけ風呂敷広げてるんだか。。。。

とにかく、めでたしめでたし。

実に馬鹿馬鹿しくて、面白かったのでした。