とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

スターウォーズによると世界は

図書館の新入荷本棚にあったのを一目見て、タイトルが魅力的過ぎて借りてきてしまった。
こういうのは、瞬発力が大切です。
すぐ借りないと、次は予約しても手に入るまでに何ヶ月もかかったりする。
借りっぱなしで、返却の遅〜い困った人がいるんですね。
公共のものなんだから、読んだらすぐに返却しましょうよ。

と、まあ愚痴は置いておいて。

ハーバード大学の教授が書いた本です。
憲法がご専門だそうです。
オバマ政権時代には、ホワイトハウス情報規制問題局というところの曲調もされていたそうです。
そんな、そうそうたる肩書きの方が、スターウォーズを例に、ご専門の憲法行動経済学などなどの政治学的な知見を解説してくれるはずの本。
と見せかけて、実は、解説本にかこつけて好きなだけスターウォーズネタで語る本でもあります。
(訳者あとがきより)

賛否両論ある本らしですが、私は単純に面白かったです。
スターウォーズ好きだし。
この著者もですが、私も当然の様にアメリカ人も、みんなスターウォーズ大好きだと思ってました。
何しろ、軍の放送(AFN)で、『キャリー・フィシャーさんが心臓発作で亡くなった』というニュースを、『シンゾウ・アベが日本の首相として初めてパール・ハーバーの記念式典に参列した』というニュースより先に流しちゃうような国ですから。
でも、意外とそうでもない様ですね。
序文でも、奥さんから『別にスターウォーズが特別好きってわけじゃないのよ』と言われたことが書かれています。
とはいえ、やっぱりスターウォーズ愛に満ちた本ではある。
もちろん、さらにディープなオタク本もいっぱいあるのでしょうけど。

さて、序盤ではなぜスターウォーズがこれほど成功したか、という命題で人の行動についての心理学的考察がされています。
すでに成功している映画を取り上げているので、逆に難しいお題だと思うのですが、著者はいくつかの視点から分析していいます。
例えば、一例としてあげられたのは『シュガー・マン』というドキュメンタリー映画の主人公となった一人のロック・スターの話、実話だけに説得力がある。
さらに、SNSを利用した架空の音楽市場を舞台にした規模の大きな心理学実験。
こんなことやるのってアメリカ人ならでは、だよな。
この実験結果も、面白い。
これらを合わせて、スターウォーズは大ゴケした可能性も十分にあったのだ、と説明されるとなるほどぉ、と思う。

私が一番面白いと思ったのは、脚本家たちが新エピソード(『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』)で、新しいスターウォーズの世界を二次創作することと、判事たちが憲法解釈することとを並べて解説しているところ。
憲法は、立国の際に制定されて、まず改憲されることはないのだけれど、その解釈によっていくらでもストーリーは変わっていくのだ、という話。
アメリカ建国に際して、憲法を制定した人々はのちの自由民権運動や、同性結婚について予期していたわけではない、という話は以前も聞いたことがあったけど、本書を読んで、一番腑に落ちた。
これを読むと、日本の憲法も別に変えんでいいのではないかい、と思う。
要は、解釈の仕方な訳だし。
一方で、憲法を変えないからといって世の中が変わらないわけでは決してない。良い方にも悪い方にも容易に変わりうるのだ、ということもよくわかる。

他にも”反乱のカスケード”についてや、ジェダイの騎士は実は詐欺師と同じ手口を使っている、といった話など、色々なことがスターウォーズのエピソードを例に挙げて説明してくれています。

まるで、面白い授業を聞いているみたい。
そうでした、本職は大学のロースクールの教授なのでした。
こんな面白い教科書で、授業をしてくれる教授がいたら大学ももっと面白かったのに、と思ったのでした。


つい買ってしまった『最後のジェダイ
エピソードを盛り込みすぎて、雑、だとか色々言われていますが、神話を始め、古事記だって聖書だって、登場人物の心理描写はしてないわけで、その辺は見た人が各々で補うと思えば。
もうすでに、スターウォーズシリーズは神話化してきているわけだし。