とりあえず始めてみます老いじたく

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ボヘミアン・ラプソディ〜めっちゃネタバレしてます


出典:映画『ボヘミアン・ラプソディ』公式サイト 大ヒット上映中!


突然ですが、私の妹はけっこう好き嫌いがはっきりしている人で、気に入らないとどんなに高価なものでも、有名ブランドでも目もくれない。
その代わり、気にいるととことん使い倒す子です。
小学校の頃、一週間くらい同じ服を着てたことがあって、同級生が『妹ちゃんって、服を一枚しか持ってないみたいね』と家に帰って母親に言ったとかで、心配したそのママ友に母が『女の子さんなんだから、たまには違う服も着せてあげたら』と言われてしまったことがあったくらい。
(『違うのよっ。服はいっぱい持ってるけど、その服しか着ないのよっ』と母が必死で弁明してましたっけ)

そんな妹が、ある年の夏にハマったのがクイーンでした。

夏休みの約一ヶ月ほど、毎日、寝ている時間とご飯食べている時間以外は、延々とクイーンのアルバムをエンドレスで聞かされた私。
一時は、クイーンを聴くと蕁麻疹が出るんじゃないか、と思ったっけ。

スティングは、世界一セクシーな声の持ち主だと思ってたけど(今も思ってます)、フレディ・マーキュリーの甲高い声はちょっと耳障りに思えたし、エイズで亡くなったって話も、誰かに聞いて『ふーん、そうなんだ(やっぱ、ロックやってる人って非業の最期を遂げるんだねぇ)』くらいの感想しかなかったのでした。

だけど、先日のよくわからんかった『2001年宇宙への旅』を観に行った時の宣伝を観たらば、ちょっと面白そうだな、と思いまして。
あの夏からもう40年は経ってるから、もう蕁麻疹も出ないし。
それで、アミュプラザIMAXで観てまいりました。
ここからネタバレ全開です。


舞台は、1985年に行われたコンサート場面から始まります。
世界中に配信されたチャリティ・コンサートで、あのダイアナ妃の姿も一瞬ですが出て来ます。
当時の映像と、新しく組み入れた映像の違いがわからないくらいに作り込まれてます。

そして、舞台に出て行く直前のフレディの後ろ姿を映したところで、場面が変わって飛行場の貨物係をしている若き日のフレディ。
どんなに有名な人物にだって、箸にも棒にもかからないちっぽけな時代があったのですな。
実直な父の期待に答えられずに、ふらふらとバイト生活をしているらしいフレディくん。
気に入った素人バンドの追っかけをしています。
ある日、自分の作った曲を売り込もうとそのバンドのメンバーに会いに行ったところ、なんとボーカルが辞めたばかりだという話。
チャンスとばかり、自分を売り込むフレディくん。
『出っ歯だから、広い音域が出せるんだ』と言ったり、自分からお願いした割には、『オファーについて考えてやるわ』的なことを言ったりと、最初から態度がでかくて、俺様フレディ様なところが、才能ある所以かしら、と思わせる。

最初のコンサートでは、マイクの高さをうまく合わせられなくて、パニクった挙句、スタンドから外してしまい、振り回して歌い出すわ、歌詞忘れて即興で歌うわ。
でも、彼の素晴らしい歌唱力に、みんな熱狂したのでした。

やがて、さらなるステップアップを目指してアルバムを作ることにした彼ら。
その制作現場にたまたま居合わせた敏腕プロデューサーの目にとまり、トントン拍子でデビュー、ヒット曲を次々とだし、コンサートでは人々が熱狂し、気がついたらトップスター。
ボーカルデビューの際に知り合ったメアリーとも婚約して幸せ絶好調。

なんてね、本当はそうでもなかったらしいですね。

最初はなかなか売れずに苦労したらしいけど、そこは映画ですから軽くスルーしてます。
実際は、フレディ以外のメンバーも作詞作曲をしていてちゃんとヒットを出しているし、初期には楽器を手作りしたりと、それぞれに才能ある人たちだったようなのですが、早逝の天才フレディ・マーキュリーに焦点を当てるために、その辺は省略されています。
まあ映画の長さを考えたら、それはそれで仕方がないのでしょう。

兎にも角にも、押すも押されぬスターとなったフレディとメンバーたち。
新しいアルバムを作るため、田舎家にこもります。
ここで、あの有名なボヘミアン・ラプソディが作られたそうな。
その辺りから、メンバー同士の確執だったり、のちに愛人となるポールとの絡みだったりが語られます。

ボヘミアン・ラプソディは、当時から賛否両論というか酷評されることが多かったようで、発表するのも大変だったらしい。
なんとか説得して出したものの、最初は見向きもされなかったとか。
そうかもな、今聞いてもかなり癖のある曲だもんね。
あんなの他にはないだろう、という気はする。

ボヘミアン・ラプソディはこけたけど、他の曲はやっぱりヒットして、相変わらず売れまくりのクイーン。
なんとなく、自分がゲイなんじゃないか、と気が付き始めるフレディ。
ある日、思い余ってメアリーに打ち明けると、あっさり
『あなたはゲイなのよ』
と言われてしまう。
こういうことってやっぱり、わかるもんなんですかね。

あまりゲイの人と話したことがないのですが、以前、飲み屋で同席したゲイの人に聞いたら、
『相手がゲイかどうかは、見たらわかる』
ものなのだそうです。
私は彼が自分で言うまで、気が付きませでしたし、知らされた後も、異性愛の人との違いはわからなかったな*。

ともあれ、自分がゲイだと自覚してメアリーと別れ、ポールと暮らし始めたフレディ。
別れたのに、メアリーが恋しくてわざわざ隣に家買って住んだり、ベッドルームからランプを灯しあって合図しあったり、とこの辺り寂しがりやの子供みたいなフレディ。
寂しげな表情が胸に迫るものがあります。
うまいなぁ、この役者さん。

この辺りから、元のメンバーとのすれ違いがますます増えてきて、それでもその中で、かなりの有名な曲が作られていきます。

けれども、結局は決裂。

フレディはソロデビュー。
毎晩、仲間を集めてどんちゃん騒ぎ、お酒を浴びるように飲んで、ドラッグをやって、と荒んだ暮らしを続けます。

あるパーティの後、フレディはケータリングスタッフのジム・ハーディと知り合います。
ジムはフレディに『本当の自分を取り戻したらまた会おう』とだけ言い残して去っていきます。
なんか、格好いいんですけど。

ついに、ポールと別れてメンバーの元に戻ろうと決心するフレディ。
メンバーに『許してくれ、元の鞘に戻ろう』と謝ると、最初はあれこれ言う割には、あっさり許されるフレディ。
主役であるフレディが、エキセントリックな人物なのはその通りとして、彼を取り巻くメンバーや弁護士をはじめとした関係者たちが妙に物分かりがいいのは、彼らがご存命だからかしら。
反対に、ポールがあまりよく描かれていないのは、途中で暴露本出したりしたから、かな。

とにかく、元に戻って復帰第一弾のお仕事として、冒頭のチャリティー・コンサートに出演することになります。
しかし、その時すでにフレディはエイズに感染し、発病しておりました。

最後の30分は、がっつり当時のコンサートの場面が流されます。
私はコンサート自体を観てないし、よく知らんのだけど、DVDで、『何度も観た』という人も納得の作り込み、だそうです。
なんでも、ちらっとしか出てこない端っこの方に写り込んでる小道具なんかも、しっかり再現しているらしい。

歌も、俳優さんがフレディの音声を使わずに歌っているシーンもあるそうなのですが、どのシーンかあんまりわからない。
もしかしたら最後のコンサートの場面は、全部、俳優のラミ・マレックが歌ってたのかも?

切り替わる場面と音楽のテンポがよくて、観ていて楽しい。
一人の音楽家の栄光と挫折の物語、と思って観ると、ちょっと物足りないかもしれない。
あんまり、ネガティブなパートがないしね。
あれだけ癖のある人物だったのだから、おまけにゲイだし、当然あったであろう家族との確執もほとんど語られてません。
てか、お母さんも妹も理解ありすぎ。

でも、音楽は素晴らしかったし、映像も素敵。
何より、ラミ・マレックの演技が良かった。
ちょっとした表情とか。
他のメンバーを演じた俳優さんたちも、すごく役作りしてます。
難をいえば、NHKの朝ドラみたいに、主人公たちがあまり老け込まない(経年変化がわかりにくい)ところかな。
実年齢が45近くなってても、最初の大学生の頃の容姿のまま、なんですもの。
メアリー役の女優さんも、とても上品で綺麗な女優さんでしたけど、もう少し年取っててもいいのでは?

それはさておき、クイーンのことを全然知らなくても、十分楽しめる映画でした。



*:ゲイとはっきり知って話をしたのは、その人が初めてだったので、比べようがないのですが、ごく普通の感じの良い青年でした。
(飲みの席でたまたま同席しただけなので、相手も言ってもいいやって思ったのでしょうね)
彼の恋人だというおっさんとも話をしたのですが、そっちは、やけに男尊女卑でミソジニーな言動のやな感じのおっさんでした。
けど、男尊女卑でミソジニストは、普通のおっさんにもたくさんいるしな。。。。ん?もしかして、男尊女卑のミソジニストって実は隠れゲイ?。変なことに気がついてしまった。。。。