とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

持たない幸福論〜を読んで

ニートの歩き方の著者による本です。
前作とほとんど変わらない内容です。

前作で、きっとあれこれ叩かれたんでしょうかね、今回はいろいろ勉強して、ちょっとは理論武装している感じが、好感持てます。
基本、真面目な人なんだろうな。

いつか読んだ、國分功一郎の「暇と退屈の倫理学」によく似たことをいっぱい語っています。
特に暇と人の行動について。
後ろを見たら、参考文献のところにしっかり載ってました。

國分功一郎先生よりも、本人が実生活で実践している分、より実感のこもった表現ですので、國分功一郎が読みにくかった人は、こちらの方が腑に落ちるかもしれない。

個人的には、若いうちにお金を使わないで楽しめるスキルを身につけておくと、歳を取っても役に立つ、というくだりに、なるほどな、と思いました。

もう入ってくるあてがない状態で、急に”お金がない”、というのは惨めだけど、最初からお金のいらない生活をしていたら、意外と困らないですみそうです。

確かにお休みもほとんどなくて忙しいと、なかなかお金を使わずに楽しむ、という余裕がないのは確か。
金銭的な余裕がないのは不安だけど、時間的な余裕がある生活の方が「豊か」なのかもしれないと、私も、最近、考え方が変わって来た気がします。

前作のニートの歩き方もそうだったけど、読んでいるうちに、なんだか落語の与太郎ものを思い出しました。

怠け者だったり、要領が悪すぎて仕事がうまくいかない与太郎のところに、長屋の大家さんとか、本家の伯父さんがやってきて説教する、みたいな。

江戸時代にも、結構、著者のような人はいたのかもしれません。
それはそれで、なんとか周りが、あれこれ口を出したり、面倒を見たり、していたのかも。

おい、与太郎、居るんだろ、え?
ちょいと話があってやってきたんだよ。
おいおい、居りますって、返事しだけしやがって、まだ寝てるよ、こいつ。呆れたね、もうお昼だってのに。
お天道様からバチが当たるよ。
これ、起きなさいよ。ほれ、しゃんとして。
ああ、おじさん、おはようございます。って、もうお昼ですよ。全く、良い若いもんがこれだよ。
おじさんこそ、良い年寄りが昼間っから、こんなところで何をしてるんですって、おまいさんに言われたかねぇよ。
え、与太郎、あたしゃね、おまいのおっかさんに頼まれて、来たんだよ。ちょいとね、一つ話をしてくれないかってね。

与太郎、お前、仕事辞めてもう8年もふらふらしてるって言うじゃなねぇかい。一体、どう言う了見だい?
おっかさんも嘆いてたよ。
与太郎は、勉強もよくできる子で、京都大学まで入ったのに、そのあとが、どうも、いけなかったってね。
この就職難に、せっかく良いとこに就職できたってのに、すぐに辞めやがって。そのあとは、何かい、なんかしてんのかい?

え、だるいから、寝てばっかりだって?
あとは、ゲームとネット?
いけねぇよ、良い若いもんがさ、ひる昼間っからさ。
ちったあ、社会ってもんに貢献しないとさ。
お前がこうしていられるのも、世の中のおかげだってことを忘れちゃいけねぇよ。え?

本を出したって?
そいつは大したもんじゃねぇか。
何かい、そいじゃ、これからは作家先生かい?
いや、忙しくなるのは嫌だから、そこまでは考えてない?
呆れたね。

働きたくないって。
口開けばそればっかりだよ。
なんか、こう、働きたくなるようなモチベーション、てのかい、見つけたらどうだね。
うん?
彼女とかさ、いないのか?え?
もう、おまいさんもいい歳なんだからさ、結婚してさ。
男ってのはさ、ちゃんと一家を構えてこそ一人前ってもんで、、、。
なに、面倒だから、そんなもんはいらねぇって?!

全く何を考えてんだかね。
え、与太郎よ。あたしだってさ、たいそうなことは、言えないけどさ、これでもちゃんと会社にさ、定年まで勤め上げてさ。
カミさんと、娘二人育て上げてさ、、、

そいで、おじさん、退職金はカットされてて、思ったより年金ももらえそうもないから、再雇用でまだ働いてるんでしょ。だいたい家に帰っても、奥さんも娘たちも、全然相手にしてくれないから、居場所がないんで、おいらんとこ、こうして暇つぶしに来てるんでしょって、、、痛いこと言うねぇ。こいつは。

全く、口ばっかり達者になっちまって。
何かい、じゃ、なんか自分なりに考えてることもあるってのかい?
ちょいと聞かせてごらん。ん?怒んないからさ、言ってみなよ。

なになに?

「自分のペースで生活に実感を持ちながらゆっくり暮らす」ことを大事にしてるから、今の生活で十分満足。
「満員電車に乗って、職場で気の合うわけでもない人たちとずっと顔を合わせていると、それだけで生きるエネールギーをすっかり消耗してしまっていた」
「その頃に比べたら今の方が、お金がなくても気持ちに余裕があって自分のペースを保って生活ができてるのでちゃんと生きている感じがするし、全体的な幸福度は高い」

って、そういうものかねぇ。
まあ、人それぞれだし、それでお前さんが良いっていうなら、それでも良いけどさ。

だけど、与太郎よ、今はまだ若いし体力もあるから良いよ。
年取って、老いぼれて来たらどうするね。
仕事だって、今ならまだ何かしらはあるだろうけどさ、年取ったら、それだけで雇ってくれるところもなくなるし、身体が動かなくなって、金がねえ、ってのはしんどいぞ。

そんときゃ、そん時、また誰かに助けてもらってなんとかなるでしょ、って。いざって時に、友達とか、助けてくれる縁がそうあるもんかねぇ。

おじさん、おいらニートですから大丈夫ですって、なんだい、それ?
ニート(糸)だけに、(縁を)繋ぐのは得意です。

お後がよろしいようで。