イギリス毒舌日記 ウイルトモ
デービッド・アトキンソン先生に、日本人としてガツンとダメ出しされて、ただただ落ち込んだら、ちょっと気分転換と意匠返しに、こちらを読んで溜飲を下げましょう。
本当は素直に反省して、悪いところを直すべきなんでしょうけどね、人間、なかなかそう素直にはなれないもので。
イギリス人であるご主人の両親の介護のために、イギリスに移住した日本人妻のブログを本にしたものです。
これを読むと、アトキンソンの言及するイギリスってどこ??と思いたくなる。
もう、イギリス、終わってます。
確かに海外事情をネタにするとなると、どうしても違うところを強調しがち。
同じところは逆にネタにならないし、面白くないし。
でもね、それにしてもね。
本書では、日々の日記をいくつかの章にまとめています。
イギリスでの病院事情や、諸手続き関係について書かれた章。
食べ物事情についての章。
イギリスでの職探しや、就業の実際についての章。
イギリスでの出産、子育て。
そして夫とその家族。
仕事の章でのイギリス人たちが、アトキンソン氏の語るイギリス人と大違いで笑えます。
片や一流大学出身の一流会社勤務歴のある、そして(おそらくは)上流階級出身のイギリス人、
片や、大阪出身の主婦。
属している社会も違いますし、どちらも間違いではないのでしょうけど、日々の日記をもとにしているだけに、ウイルトモさんの方に軍配が上がりそう。
思うに、アトキンソン氏の語るイギリスやイギリス人はいってみれば、哲学なんかに出てくるイデアってやつではないのかしら。
どこにも存在しない想定上の(アトキンソン氏はそうなのかもしれませんが)理想のイギリス人ですね。
さて実際のイギリス人となると、もう凄まじい、というしかない。
トイレ流さない、食べたもの洗わない、食事をするテーブルに平気で脱いだ泥だらけの靴を置く。
フライドポテトを野菜だと信じている。
大学でマネージメントを学んできていても、在庫を数えることすらできない。
著者は日本では主任を務めるキャリアウーマンだったそうですが、そこは言葉の通じない異国。
資格もないため、必死で職探ししてやっと見つけたアパレルブランドで売り子さんをしています。
でもそこでは、客が来てもレジでダラダラおしゃべりしてたりおやつ食べてたり。
二日酔いだから、落ち込んでいるから、起きられなかったから、と堂々と欠勤する。
などなどなど、、、。
経営者や上司も、開店時間にミーティングしたり、在庫管理の必要性すら説明できなかったり。
一番笑ったエピソードは、客から『接客がなっていない』と、クレームがきたときの対策として、職員の休日を増やして売り場に立つスタッフの数を減らし、サボっているのが目立たないようにする、というもの。
そんな、ぶっ飛んだイギリスの職場やイギリス人の同僚に、苛々したり呆れたりしながら、日本の勤勉で真面目な職業人を懐かしみつつ日々働いている著者。
同情しつつも、アトキンソン氏にけなされるほどひどくないじゃん日本人、と思うとなんかほっとする。
しかも、この著者さん大阪出身だけに関西弁全開の文章がまた軽快で面白い。
彼女にかかると、イギリス人がみんな関西弁のおばちゃん、おいちゃんになってしまう。
なんか、肩の力が抜けてイギリスだって大したことないじゃん、という気持ちになれます。
海外妻のエッセイの中では、有名どころの岸恵子のエッセイも面白いですが、一番好きなのはテルマエロマエ著者のヤマザキマリ。
漫画になっております。
この人は年下のイタリア人男性と結婚しているのですが、子離れできないイタリア人義母の話がすごく面白い。
こういうのを読むと、私などはいい姑と小姑に恵まれてよかったな、としみじみ思います。