とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

ラッキーマン


パーキンソン病ってどんな病気なんだっけ?
と思って、図書館で借りてきました。
というのも、最近、パーキンソン病の患者さんに会う機会が増えているから。
だいたい、訪問診療で一日平均20人くらいの患者さんに会うのですが、そのうちの何割かにパーキンソン病の患者さんがいます。

最近、診断された人もいれば、もう何十年も患っているという方も。
症状も、病気の進み方によって微妙に違う。
なので、全体像をイメージできるといいな、と思って。

私が知っているエンターテイメントの分野で、パーキンソン病が出てくるのは、宮部みゆきの現代怪談ものの短編くらい。
ちなみに宮部みゆきは、ウイルス性味覚障害とかウイルソン病なんかも作品の中にも取り上げていて*、医学のことにも造詣が深い作家さんです。

病気についての解説本ではないので、それほど病気の症状などが詳しく書かれているわけでは、もちろんありませんが、むしろ、症状があってもこんな風に暮らしていけるのだ、ということがわかって勉強になりました。

彼の生い立ちとか、俳優としての生活の話とか、ハリウッド裏話的なものが挟み込まれていて、そっちに興味がある人にも面白いと思いました。
私は、その辺はほとんど読み飛ばしちゃったんですけど。
あ、でもある時パーティで『アメリカのビールは、水っぽいからカナダのビールを個人的に輸入して飲んでる』と言ったら、一週間後、その会社から無料で大量のビールが提供された話は面白かった。
他にも、有名人になったことで、ホテルはいつ行っても、飛び込みでも、いい部屋を用意してもらえるし、予約でいっぱいのレストランでも席がある、交通違反チケットはごまかしてもらえる、等々の特別扱いの話が載っていました。
そんな扱いを若いうちに味わってしまうと、どれだけ危険か、も。

そうして、有名人生活を楽しみつつ、最愛の妻や子供に囲まれて幸せいっぱい、なはずなのに若年性パーキンソン病になってしまった彼。
初発症状はなんと29歳の時、でした。
さすがにすぐには診断がつかなかったようです。

診断されてからは、仕事ができなくなる前にお金を稼いでおこう、と、あまり評価の高くない映画にばかり出演したり、将来への不安からアルコール依存症になってしまったり、ということも書かれている。
診断されて、薬物投与されていても、受け入れられない自分がいたことなども。
その辺のあたりのことは、割と軽く書かれていて、かえって書くのはさぞ辛かったのだろうな、とわかる。

病気が進行していく中、まだカミングアウトできない頃、薬で症状を抑えつつ仕事をしている様子は、とても参考になりました。
何と言っても、そのあたりを知りたくて読んだのですし。

終わりの方で、世間にカミングアウトしてから財団を立ち上げ、本を書くに至った経緯が語られます。
その辺からは、メディアでも取り上げられていたから、それほど目新しくは感じない。

本は8章からなっていて、最初の症状が出たシーンから始まるのだけれど、あとは時間が前後して、所々で彼の生い立ちや祖父母に関するエピソードが、かなり唐突な感じで、語られていたりして、ちょっと混乱します。
でも、それが話が進む中でうまくオチにつながっている。
やっぱり映画の世界の人だから、映画っぽくなっているのでしょうか。
文章も読みやすいです。
奥さんのお兄さんに当たる人が、有能な編集者で彼につきっきりで著作を助けてくれたそうですが、それを割り引いても、若くして難病を発症したという暗い話を、いかにもバックトゥーザ・フューチャーの主人公らしい冒険活劇のように明るく書いている点が、よかったな。

久しぶりに、バックトゥーザ・フューチャーが観たくなりました。
特に、続編ではすでにパーキンソン病の症状が出ているのを薬で抑えながら、撮影していたそう。
ついそういう目で観てしまいそうですが、それも勉強になるから、いいか。



宮部みゆき*
すごくいっぱい書いてますよね。
作品も映画化しているし。
最近は時代ものが多いような気がするな。
ウイルキンソン病が出てくるのは『パーフェクトブルー』というミステリー。
野球少年を主人公に、ドーピング問題や薬害問題が絡めてあって読み応えがあります。
野球好きな彼女らしい、ちょっとしたコメントが挟まっていたりして、そこも面白い。