とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

おいしいデ〜梅原真


デザイナーさんの書いた本です。
でも大学は経済学部だったそう。
放送局の美術部門に就職。
そこでは店のデザインや、テレビの大道具、祭りの現場監督などなど色々な仕事があり、経験を積みました。
その後、フリーのデザイナーになったのだそう。
主に、故郷の高知で仕事をしている。
さらにデザインだけでなく、新しいプロジェクトを提案したりも。
大学で経済を勉強したと言うベースがあるから、ただのデザイナーに終わらない、仕事ができるのかもしれません。

確かにデザインって大事。

この本を図書館で見かけてつい手に取ってしまったのも、やっぱり本のデザインによるものが大きい。
シンプルに真っ白な表紙に『おいしいデ』って書いてある。
”デ”だけカタカナなのは、デザインの”デ”だからかな?
なんだか目を引きます。
最初は、料理のレシピ本かな?と思った。
でも、流し読みしたら違うみたい。
いかにも純朴そうな、作業服のおじさんやおばさんが、自然豊かな風景の前で笑ってる写真が載ってます。
ご当地産物広告の本?
でもなさそう。

気がついたら、手に取ってて、作者の思うツボにはまってました。
文章は短くて、ちょっとつぶやき系なので、こう言う文章が苦手な人は、とっつきにくいかも。
今までのお仕事の紹介を、章ごとにしています。
うまくいった仕事ばかりなのは、ある程度は仕方ないのかしら。
破産寸前のいりこ工場が、デザインのおかげで再生する話とか、全然売れなかったご当地アイスが、デザイン一つで年商4億になった話とか。
この人にデザインしてもらったら、すぐにでも飛ぶように売れるんじゃないか、と言う気にもさせられてしまう。

『デザインは経営資源である』
と言う言葉も、経済を学んだデザイナーだからこその主張なのでしょうが、そう言われてみたら、そうだよな、とも思います。
なんだかんだ言って、物を選んで購入する時の決め手になるのは、品質の良さだけでなく、そのパッケージや商品のデザインの比重も大きい。

先日、猫のトイレを衝動買いした私としては、しみじみ、思い当たる節がある。
www.ro-katu.com

生産者が本気でつくったいいものは必ず売れる。と、ボクは思っている。そして、デザインの力で市場を開いていく。
いりこの未来、いりこ一家の未来のために、背中を押すのもボクのシゴトだ。

と著者は言います。

鹿児島にも、真面目にいいものを作っているところはたくさんある。
でも、デザインがいまいちだったり、味付けが自己満足だったり、でいまいちなことが多い。
そう言う、生産者さんにぜひ読んでもらいたい。

オリジナルでおしゃれなデザインは、なかなかできるものではありません。
でも、『センスって要は訓練だ』と言う意見もあります。
良い作品を見つけるセンスは、創造する才能がなくても身に付けることはできるものらしいから、コツコツとセンスの良いものを見極める努力は必要だな、と思います。

ところで、著者は主に一次産業を応援するようなデザインや提言をしていて、時には、損を承知で商品開発の手伝いもするし、ほとんど無料でデザインをすることもあるらしい。
『絶体絶命のうめちゃん』と呼ばれているそう。
絶体絶命の産業を、助ける仕事をしているから。

一方で、真面目に愚直に作っているから、と言って諸手をあげて応援するわけではない。

引き受ける仕事と受けない仕事は何ですかと、よく聞かれる。
カクゴがあるかどうか、ユーモアがあるかどうか、どちらもなければ、お金があるかどうか(笑)だといつも答えているが、その中で一番大きいのは覚悟の部分だ。絶体絶命の状況だからといって可哀想なだけではダメで、相手に覚悟がなければ仕事ができない。

いいことしているからやってくれませんか的なシゴトがよく来る。延々と無料でやることを求め続けられることに、疑問を感じつようになった。絶体絶命であっても補助金やタダでやったものは、どうもうまくいかない。どこかでお互いの心の中に隙ができるのではないか、と思う。

と、ある意味手厳しい。
かえって、著者が変に偽善的な胡散臭い人、ではなく、真剣に地元の(ひいては日本の)一次産業を何とかしようと、思っているのが伝わって、好感が持てました。
世の中回っていくには、なんだかんだと言ってもお金が必要なのだから、理想だけでやろうとするのは、ある意味、偽善、だよね。

そんなことを思いつつ、著者の本拠地である高知の美味しそうな産物をたくさん眺めているうちに、高知に行きたくなってしまって、良い旅行ガイド本でも、あったのでした。