とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

ペースメーカー


先日、看取りがありました。
90近い年齢の方でした。
老衰でした。
もともと、本人にも家族にも『自然な形で逝きたい』、と言う希望があり入院はせず。
入居していた施設に、ご家族が泊まり込みで付き添い、良い最期だったと思います。

さて死亡確認の後、施設の職員さんから
『ペースメーカーが入っている、とご家族が気にされているんですけど』
と話がありました。

昔は、ペースメーカーが火葬場で破裂して危険なのではと、亡くなったら取り出していたらしいのですが、今は火葬場の設備もよくなったので、無理に取り出さずとも良いのです。
もう何年か前の医師会報か何かで読んでいたので、その旨伝えました。
一応、『念の為、葬儀屋さんに確認して必要ならご連絡ください』と言ってはおきました。

私自身、看取りの後でペースメーカーを取り出したのは一回くらいしかありません。
10年くらい前かな?
たまたま当直で、他に相談する先生もいなかったので、看護師さんに言われるがまま『そう言うものか』と思って、取り出したんでした。
その時も、他の先生から後で
『別に、取り出さなくても良かったんですよ〜』
と言われたっけ。

なのでこの件はもう済んだ、と思ってクリニックに帰って診断書を書いていたら、さっきの施設から連絡があって、
『葬儀屋さんから、取り出すようにと言われました』
とのこと。

仕方がないので、またもや道具を持って施設に舞い戻りました。
取り出すこと自体は、対して手間ではないのですけどね。
深夜に眠い目をこすりながら、クリニックと施設と、と行ったり来たりは、しんどいもので。

その時は、正直言って、対応した葬祭場のスタッフが勉強不足なのか、いい加減な人物なのだろう、と思いました。

あとあと何かあると面倒だから。
考えるの面倒くさいから。
それでちゃんと調べも勉強もせずに言ってるんだろうな、と。

何しろ、夜中にぐっすり眠っているところを起こされて、外に引っ張り出され、かれこれ1時間半。
誰かに八つ当たりの一つでもしたくなろう、と言うもの。

その時も、スタッフ達と
『全く、どこのしょぼい葬祭屋かしらねぇ』
と言い合ったものです。

ペースメーカーを取り出すのは、それほど難しいものではありません。
左胸のちょうどスーツのポケットの位置くらいのところに、皮下にポケットを作ってそこに埋め込まれています。
よっぽど太った人でない限り、すぐわかります。
ただ、長い時間埋め込まれていると、身体の組織が機械を巻き込んでしっかりくっついているので、ちょっと手間がかかる。
傷口は、なるべく最小に綺麗に、したいですしね。
施設のスタッフさんが見守る中、ペースメーカーを取り出しながら、亡くなった利用者さんの話を聞く。

入居されたのは、割と最近だと言うこと。
それまでは、独り暮らしで頑張っておられたと言うこと。
入居後も、ペースメーカーが入っているせいで”自然に”逝けないんだ、とよく愚痴をこぼされていたと言うこと。
そういえばご家族から、いよいよ危なくなったらペースメーカーを止めて欲しい、と希望があった(もちろん出来ません)とカルテにも記載がありましたっけ。

ペースメーカーを入れることを、不自然な延命と考えるかどうかはまた別の話になるとは思う、のですけどね。
ペースメーカーが入っているおかげで、十数年、元気で過ごせる時間が、持てたわけですし。
入居後も、訪ねてきたご家族や友人と近くを散歩することもあったそうです。
状態が悪くなってからも、さほど苦しい思いもされずに逝けたのは、他の身体の機能低下が心臓に追いつくのまでの期間を、ペースメーカーが支えてくれたおかげ、かもしれません。

そうは言っても、ご本人にとってはご自分が理想とする最期を迎えるには”邪魔なもの”、だったのかも。
だからご家族も、一緒にあの世に持ってかせたくなかったのかな、とちょっと思ったりもしたのでした。


ちなみに、後で鹿児島市の火葬場のホームページを確認したら、ペースメーカーは、入っている旨を職員に一言、申し出てください。
としか書いてませんでした。
別に入っているから火葬できない、なんてことは無い。
確か、厚生省(だったか?)の通達でも、ペースメーカーを理由に火葬を拒否してはならない、となっていたはず。
むしろ、新型インフルエンザの様な未知の感染症の時の方が、色々対応が難しい様です。
うっかり感染を広げると危ないから、でしょうね。

ついでなのでネットで調べてみましたが、ペースメーカーの製造輸出は、西欧諸国が主。かの国ではそもそも火葬をしないから、問題視されていない、のだそう。
それでも高温で破裂することはあっても、身体から飛び出すことは無いので、周りに危害を及ぼすことは無い。
例えば、火葬場の炉の様な閉鎖されている空間では無いところで、火葬しても大丈夫。
とのこと。
ただし身体の中で破裂するので、周りの骨を損傷してしまうことはあり得る。
と。
でもお骨は納骨するときある程度砕きますので、別に綺麗に形が残っていることにこだわる人はいない、と思う。

むしろ、眼鏡の様な金属やガラスや、本は一緒に燃やしてはいけない、と言う話の方が驚きました。
本は、燃えにくいから駄目。
生前好きだった本とか、書きためた研究資料、みたいなものは、一緒にお棺に入れたら駄目なんですね。

その他、副葬品として禁止されているものはホームページを見たら、しっかり記載されてました。

勉強になりました。





ちなみに舅の時は、紙おむつをしたままだったら中の高分子ポリマーが溶けて、お骨が鮮やかな緑色に染まってしまいました。
うちの一族にそう言うことを気にする人はいなかったのですが、気にする人はあらかじめオムツは外してあげたほうがいい、と思います。