とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

食べさせてあげてください


誤嚥性肺炎。
統計上はどうなのか知らないけど、お年寄りの死亡原因としてはダントツに多いと思う。

老化が進むと身体の色々な機能が落ちてきます。
もうそれはどうしようもない。
機能の落ち方は人それぞれ、身体それぞれ。
若いうちから白髪が多い人もいれば、年取っても白髪が全然ない人もいるように、老化の現れ方は本当にそれぞれ違う。

ご飯はぎりぎりまで普通に食べていた、と言う人もいれば、食欲はあるけど食べる能力の方が先に落ちてしまった、と言う人もいます。
困るのは、食べたがるけど食べられない人。

本人は食べる気満々で、『ご飯』と聞くと、うとうと寝てたのにすかさずお目目ぱっちりで口を開ける。
ほとんど寝たきりで認知も進み、家族の顔も見分けられないけど、『ご飯』の一言には反応がめっちゃ良い。
そんなお年寄り。
私も絶対そうなりそう、なお年寄り。

ただ、困ったことにそう言う方は必ずと言って良いほど、誤嚥します。
先日も、そんな誤嚥性肺炎の患者さんを臨時の往診で診察してきました。

もうね、月に一回は誤嚥してお熱が出てます。
その度に絶食にして、点滴して治療する。
痰を吸引する。
少し元気になると、ご飯は?????と。
食べるのが大好きなんですね。

施設の依頼で、ご家族に連絡するのも仕事の内。
大抵は電話での連絡になりますが、病状の説明とか治療方針などを伝えます。
ご家族によっては入院治療を希望されるところもありますが、そもそも施設に預けている時点で、入院先に面会に行ったりお見舞いに行ったりする余裕がない家族が多いので、そのまま施設での治療を希望されることも多いです。
医療関係のトラブルは後出しジャンケン的な面が大きいので、ついでに起こり得ることも伝えておかないとね。
後から『治療するって言ったんだから、治ってないとおかしいでしょ』と言われても困ります。

今回のご家族は、今までも何度も肺炎を繰り返していたせいか、あっさり、『お願いします。万が一の時はそのまま搬送せず、看取りでお願いします』と。
そして、問題の『本人が食べたがった時にどうするか?』と『今後の栄養摂取をどうするか?』。

胃瘻は、本人が希望しないのでしない、と言う方針でした。
最近はメディアで取り上げられたりするせいか、ちゃんと話し合っている患者さんやご家族も少なからずいらっしゃいます。

そして食べたがった時は?

施設だって、杓子定規に利益優先ではありません。
むしろ、人情味あふれる人が頑張っているところの方が多いのです。
介護士さんだって、介護という仕事にやりがいや意義を感じてやっている人もたくさんいる。
何より、鬼じゃないんですから、日頃から親しくお世話してきたお年寄りが、必死に『食べたい!』『死んでも良いから、食べさせて、、、』というのを、放っておくのは心が痛いのです。

だから、食べたがったら食べさせてあげたい。

だけど今の日本は本人の希望より、家族の意見。
そして、もし家族の意向を無視して食べさせて窒息させたり、肺炎がひどくなったりしたら、裁判になったりマスコミに責められたり、というのが悲しいかな現実です。

幸い、今回のご家族は
『良いです、その時は食べさせてあげてください。それで何かあっても、そこが寿命だと思ってますから』
『うちにいた時も食べるのが大好きで、大好きで。ご飯だけが楽しみな人でしたから』
と。

ちゃんとその人に関わってきたら、その人が何を望んでいるか、いざとなった時もわかるもの、なのだなと思ったのでした。