とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

もちろん、こんな家族ばかりではありません。

お年寄りは、一旦肺炎などでご飯を食べさせない期間が続くとあっという間に嚥下機能が衰えます。
食べてもすぐむせるようになる。
むしろむせるうちはいいけど、むせずに誤嚥していつの間にか、また肺炎になる。
すると家族は胃ろうを作って施設に預けてきます。

『食べさせたら死ぬ、って言われたんで、食べさせないでください』

”食べさせたら死ぬ“
そう言って、胃ろうをせっせと作る先生がいらしゃるんですよ。
確かにね、嚥下機能が落ちている人が、ふつうにばくばく食べてうまく飲み込めずに肺に吸い込んだら、そっちは行き止まりですから、肺炎になったりとか、窒息したりとかで、亡くなる可能性は高い。
という意味では正しい。

でも人は普通に生きてても、やがて年老いて死ぬんです。そして生きてる間は、食事してます。
だから、人は誰でも食べたら死ぬんですよ、究極の意味では。

それはさておき、そうやって胃ろうを作っても、適切な嚥下訓練をすれば、食べられるようになる方もいます。
ただし、その訓練はやっぱり誤嚥性肺炎のリスクを抱えての訓練になります。

リスクがあっても『口から食べた方が本人にとっても幸せだから、訓練をお願いします』
と言ってくれるご家族さんもたくさんいます。

でもね、一部、そうではないご家族さんもいる。

『何が何でも食べさせたらだめです』

どんなに本人が食べたがっても禁止。
うっかり食べさせたら物凄い勢いでクレーム。

ときには、痰を引きやすくするため気管切開もして預けて来る。

誤嚥性肺炎を起こしでもしたら、すぐ病院へ搬送。
抗生剤でガンガン治療してください。
とにかく、『死なさないでください』
うっかり亡くなりでもしたら、たとえ老衰による自然死であろうと、医療過誤で訴えかねない態度です。

何でかというと、それは年金。

全額依存していなくても、かなりの割合を親の年金依存で暮らしているという家族。
たとえ親を施設に預けても、施設の費用と支給される年金の差額が、月々数万円程度でも、それが無視できない金額になる家庭もあるのです。

今の高齢者は、割と年金をしっかりもらっている人が多い。
とくに、もと船員さんなんかだとけっこうな額になるらしい。
田舎の物価の安いところでは、そのお父さんの年金で家族が暮らしていたりもする。
専業主婦だって遺族年金がありますからね。
お婆さんがもらっている遺族年金を、その子供世代があてにしていたりも。

それだけ命を永らえることにこだわるくせに、施設に預けっぱなしで、見舞いにも面会にも来ない。
預けられているお年寄りは、可哀想です。
なんで、こんな家族しかいないのだろう。
側で見ている他人としては、この人何ぞ前世でよっぽど悪いことでもしたんやろか、、、そうでも思わなければ釈然としないことも、ある。

日本の福祉は、高齢者に優しいと言います。
戦後の貧しい大変な時代を支えてくれたおじいさん、おばあさんたち。
その人たちのために、様々な福祉サービスがあるのは良いことだと思います。
そうした人たちがお金の心配をしないで老後を過ごせる社会も、もちろん必要だと思います。
私たちだって、いずれは高齢者になるわけですから、安心して老後が過ごせるように国にはぜひ面倒を見てもらいたい。
ただ、制度というのは個々人の細かい事情に合わせて作られるわけではない。
だから、こんな悲しい家族とお年寄りも存在してしまうのでした。