とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

デイサービスで居眠りするんですって言われても

在宅訪問医のお仕事は、ご自宅に伺うだけではありません。
施設に入居している方の診療もかなりの割合を占めます。

施設での診察には、大抵専属の看護師さんがついてくれますが、時には介護士さんのこともある。
日々の入居者さんの様子を、よく知っている看護師さんや介護士さんからの情報はとても大事で、参考になります。

特に、排便の状態とか、睡眠の状態などは意外と大事。
お年寄りって便秘で腸閉塞とか、さらにひどくなって腸破裂なんてことも起こりえますので。

でもね『入居時から、デイサービスに参加されたがらなくて困ります』と言われても、デイサービスに参加したくなるような薬、なんて当然ですが、無い。
デイサービスを提供している施設は、デイサービス利用料も重要は収入になるので、参加してもらいたいのはわかる。
でも、サービスの内容に魅力がなければ、行きたく無い気持ちにも共感できる。
もともと、一人で静かに過ごすのが好きな人だったら尚更です。

それにね、デイサービスのプログラムって、見たことあるけど、お世辞にも楽しそう、とは言い難いものが多い。

いつだったか、バレンタインデー近しの二月のある日。
訪問した施設では、デイサービスの催しとして、その昔バブルの頃の深夜番組であったようなことをやってました。
入居さんたちを男女に分けて、女性から男性に手作りクッキーを渡して、男性は風船(だったかな?)をお礼に渡してお互いに握手しあう、というもの。
もちろん車椅子の人が多いから、スタッフさんが無理やり車椅子で、輪になった中央に二人を連れて行ってプレゼント交換させるんですけどね。
参加者さんたちは、一様に困惑した様子で静まり返っている。
皆さん、居心地悪そうで『帰れるものなら帰りたい』気分がありありと伝わってきてました。
ノリノリなのはスタッフたちのみ。

だって、平均年齢ほぼ90才の方達ですよ。
彼らの青春時代に、バレンタインデーなんて存在しなかっただろうし、そんな衆人環視の中、たまたま一緒に入居していているだけの相手にプレゼント、とか無い、でしょ、普通に。
お互い認知症が多少あるにしても、立派に一社会人として過ごしてきた方達です。普段は礼儀正しく会話もしているでしょう。傍目に見ても、なかなかに微笑ましく仲良くしている人たちもいるでしょう。
けど、個人的にプレゼントをあげたいかどうかは、別だと思うの。

普段のデイサービスだって、みんなで歌を歌わせたり、座ったままで体操したり。
歌はね、定番の”故郷”(例のうさぎが美味しいやつ、じゃなくて”兎追いし〜♩”)とか、鹿児島おはら節(”花は霧島〜♩”っての)。
もう飽きるよ。
鹿児島育ちじゃ無いから、歌詞もそんなに知らないし。

私が入居する頃は何を歌わせられるのだろう?
少々不安になります。
やっぱり、たのきん何とか、ジャニーズだろうか?
松田聖子とか中森明菜とか?
謡曲も好きじゃ無いし、アイドル系はそもそも好きじゃ無いのだが。
ABBAとか無いだろうな。
ましてやクィーンとか、スティングが好きなんですって言っても『何それ?』なのだろうな。

だいたい、人に強要されるのなんて金輪際、嫌、だと思うの。

いっそおしっこまみれでいいから、引きこもってゲームでもしていたい。

そんなことをつい思ってしまうので、デイサービスに参加したがらない入居者さんの気持ちもわからんでも無いのです。
むしろ激しく共感してしまう。
とは言え、やっぱり施設には施設の”大人の事情”があるわけで、時には無理やり参加、と相成るらしい。
すると、居眠りしているそうな。
(そりゃ、つまんなきゃ寝るしか無いもんね)

それをどうにかしてくれろ、と言われてもな。

見れば真面目そうな若い職員さんです。
一生懸命、学校や講習で習ったプログラムを考えてやってるのに、部屋の隅っこで居眠りされたら沽券にかかわるんでしょうかね。
もしかして彼らの仕事の評価に影響する、のかな?
そんな事情も考えてしまうと、
『もういい加減いいお年なのだから、ご本人のお好きなように過ごしてもらっても良いのでは』
と遠回しに答えるのが、精一杯のヘタレな私なのでした。