とりあえず始めてみます老いじたく

ねんきん定期便をきっかけに老活してみることに

医療崩壊。。。。

先日、知り合いのお医者さんが主宰するメーリングリストにこんな内容のメールが投稿されました。

コロナ陽性となった患者が、陽性であることを隠して隣の県のクリニックを受診した。
診察したクリニックは後から患者の家族よりそのことを知らされ、現在は二週間休診の状態である。
住所が県外であったり、不審な点がある患者に気をつけてください。


投稿された先生は、”黙っていれば診察してもらえるだろう、と言う悪意に満ちた行為”とかなりご立腹されておられました。
確かに人口が少ない地方で、経営もぎりぎりの状態でやっている診療所では、二週間も収入が断たれるのは、痛い。
その診療所を頼りにしている近隣の患者さんにとっても、大きな損失です。
その上、風評被害だって今後予想されます。
二週間経って再開院しても、嫌がらせをされて診療が続けられなくなる可能性だって、昨今の状況を見ると無いとは言えない。

とはいえ、隠して受診した患者さんだって事情もある、と思うのです。
多分、コロナウイルス陽性、と診断された時点では割と元気だったのかも。
軽症者として自宅待機で入院待ち、の状態だったのかも。
だけど、だんだん自覚症状が出てきて、なのに保健所も病院も連絡しても『自宅待機しててください』しか言わないし、他の病院は”陽性”と言っただけで診察してくれないし。
とうとう、切羽詰まって”黙ってたら診てくれるよね。もし重症なら入院手配してくれるよね”と言う素人判断で、そのような行為に出たのかもしれない。
(埼玉県では、自宅待機中に容態が急変して亡くなった方の報道がありましたしね)
その結果が、診療所の閉鎖。
まさしく医療崩壊

こんな形の医療崩壊が、実際に起きるとは正直思ってませんでした。

医療崩壊って、患者さん達が地域の病院のキャパシティを超えて集中してしまい、十分な診療や治療ができなくなること、だとなんとなく思ってました。
そうじゃない、ケースもあるのですね。

今回の場合は、感染症専門病院以外の一般的な診療所、病院での感染症対策について、国がちゃんと指針を出してくれていなかったのがいけなかった、と思う。

感染疑いの患者が来た時に”これこれの対策をとって診療していれば休診にするに及ばず”、と言う明確な指針を出しててくれたら、そのガイドラインに従って診療してたはず。
そうすれば普通にコロナ陽性の患者さんだって、診察受けられたし診療したクリニックだって、二週間も休診にしなくて済んだのに。
もう日本で騒ぎが始まって三ヶ月ですよ。
いまだに、専門機関に電話で相談してください、一点張り。
で、実際は現場に丸投げ。

実際、ドクターたち雑駁な意見を載せてるサイトでも、”各自治体の医師会が、コロナ関連の診察から手を引いている”なんて投稿されてます。
一般開業医はもう一切、コロナ感染疑いの患者は診察しない。
疑いがある人は専門の病院に最初から送って、そっちで対応してください、と。
それと言うのも、国が指針をはっきり出さないから。
個々で判断して、対応してね。
だけどそれで、風評被害とかクラスター発生とかあったら、それはそっちの責任な。
休業補償?どうしてみんなそこばっかり言うの?
と言う態度。
これじゃあ、安心して満足な診察も治療もできない、と開業医をはじめ医師会が及び腰になるのも当たり前です。
お医者さんだって、看護師さんだって、みんな家族もいるし、普通に生活している人間です。
自分の生活だって、健康だって守りたい。

一般の開業医は、安心してコロナ関係の診察を出来ない状況に追い込まれてます。
検査は出来ない、関係機関の連絡はつながらない、繋がっても『来ないで』としか言われない。
そのくせ後からコロナが陽性、とわかったら二週間は休診。
その間の補償はしない。
診療のバックアップもなし。
万が一、スタッフが感染しても補償してくれるのかわからない。
これじゃあ、診てあげたくてもできない。

このまま疑いのある患者を野放しにできないから、(自分のクリニックが休診になるリスクを覚悟の上で)紹介状を持たせて『疑いがあるとは言わずに受診して』と言う”変な”入れ知恵をつけて受診させるしか方法がない、と言う意見も見ます。
それに対して、”そんなことをされたら、ウイルスを撒き散らす患者が一般の患者さんたちに混じって受診してくるわけだから、受ける病院側だって困る”と言う意見。
これもわかる。
実際に患者さんが来たときの対応が、疑いがある無し以前に、全く出来ない状況なんです。

普通の人たちは、『医療機関なんだから、感染症診察の場合の対策くらいしてるでしょ?』って思っておられると思うのですが、そんなことは、無い。
個々のクリニックの自助努力で、疑い症例の受付用に駐車場を一部改造したり、倉庫を改造したりしてますが、全ての診療所が完璧な対策を講じているわけではありません。
第一、防護服だってシールドだって、今は手に入らないもの。

感染者がまだ多くない地域(鹿児島みたいな)では、ほとんどくじ引きみたいな状況です。
”当たりの”患者さんが、うちに来ませんように。
診ないで済みますように。
ほぼ神頼み。
こんな状況、良いわけ、無い。

プリンス・ダイアモンド号のときも散々言われてましたが、仮にも国民の健康管理を総括する厚労省も実際の対策を指揮すべき総務省も、感染症の専門家の意見を全然採用してないの、しみじみ実感しております。

こうやって、実効性のある対策を一向にしないくせに、ひたすら外出自粛、営業自粛みたいな、曖昧としてて、おまけに実施できない状況の人が非難されたり、差別されたりするような、どうしようもない対策しか出してない。
だから、医療崩壊だってしちゃうんだよっ、と思わずにはいられないのでした。








追記:問題の患者さんは、埼玉県からわざわざ茨城県に受診してたみたいですね。

新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査を受けた事実を隠して受診した患者がいたため、茨城県古河市の松永外科医院が、14日から外来診療を休止していることが分かった。患者は翌15日に陽性と判明。たらい回しを懸念したといい、同医院の松永弘之院長(59)は「医療崩壊につながりかねない。感染が疑われているのに、連絡なしに来るのはやめてほしい」と訴える。

 患者は埼玉県の初診の男性。松永院長によると、足首の痛みなどを訴え、14日夕、妻に付き添われて訪れた。他の疾患は「ない」と回答したが、医院を出た後、妻から「実は今日PCR検査を受けた。たらい回しになると思い黙っていた」と電話があった。

 院長は埼玉県内の保健所に確認し、外来診療を取りやめた。ほかの患者はいなかったが、院長は濃厚接触者とされた。感染している可能性があるとは思わず、不足するマスクを使えなかったという。特段の症状はないが、一部の患者に電話診療で対応している。

出典:読売新聞4/22付

確かにある意味、悪質、と言えなくもないけど、足を怪我して骨折かもしれなくて不安だけど、コロナの検査をしてると言うと、どこも診てくれるところがなくて、かといって専門機関も外科は診てくれないし、で、仕方なく県を越えて受診されたのかも、と思うとこれもやっぱり医療崩壊、だと思う。

早く、国が指針を出してくれないと、必要としているときに必要な医療が受けられない状況がいつまでも続くことになると思うのでした。